【読者への挑戦状】『最高の祭り』殺人事件
ぎざ
【読者への挑戦状】犯人はこの中にいます
「ここはどこだ、小早川」
「はい、ここはカクヨム管轄内のカクヨム誕生祭の会場、カクヨム神社ですね」
まったく、使い勝手が良いからって、こうも間を開けずに俺たちを呼び出すとは、筆者も俺たちが好きでしょうがないようだ。
本来の勤務地は小説家になろうサイトなのだが、事件が俺たちを呼んでいる。今回はここが現場だった。
現場はカクヨム誕生祭、今日は『最高の祭り』というテーマで短編を書く、その速さを競うレースが行なわれていたとのこと。
被害者は
「俺たちが呼び出されたと言うからには、一筋縄にはいかない難事件なのだろうな」
「はい。被害者はダイイングメッセージ、略して
略してるのにもう一度言ってるぞ。
どれどれ。被害者の指元を見てみると、そこには血文字でこう書かれていた。
『まつりさいこう』
…………。
被害者の感想か?
「被害者はこのカクヨム誕生祭を心の底から楽しんでいたみたいだな」
死の間際に感想を述べる程とは。カクヨムの運営の方に伝えておこう。文字通り、死ぬほど楽しかったと。
いや、それはそれで問題だな。楽しすぎて死者が出る祭りは。
「いやいや、先輩、被害者は後ろから殴られているんですから、祭りが楽しすぎて自然死したわけではないんですよ」
わかってるわい。
「で、前回の反省も兼ねて、早速容疑者の名前を聞いておこうか」
「前回っていつの事件ですか?」
時系列的に、『キョウキの密室』あたりじゃないか?
筆者は時系列をないがしろにしてとりあえず書きたい小説を書く傾向にあるからな。
読者の為に、時系列を開示していかないと。俺は親切だからな。
容疑者は、ひとまず今から三人紹介します。と小早川。
「一人はカクヨム誕生祭史上最速で小説を書き上げた、
いいのか、それ。
「カクヨム誕生祭2020史上『さいこう』記録みたいです。まさかお題が出た瞬間に書き上げているなんて思いませんからね」
カクヨム誕生祭自体つい何日か前に始まったのだから、史上最高の名にどれほどの価値があるものなのだろうか。
「私は悪いことなんてしてないですよ。ルールの範囲内できちんと書いている。むしろ、人を殺している犯人の方がよっぽど悪いじゃないですか」と、真田飼は言う。
たしかに。ぐうの音も出ない。
人を殺した奴の方がよっぽど悪い。ルールを守っていても、無意味だ。
真田飼は列の一番前にいたという。殺害現場から見ると豆粒ほどにしか見えないほど前にいる。
ふむ。つまり、被害者は犯人を示す手がかりとして、「まつりのさいこうきろくを出した人」と書くつもりだった説ってことか。
とっても無理がある。名前を書いた方が早いだろう。
容疑者もう一人は、カクヨム誕生祭の最高幹部。
黒ずくめで金髪の長髪。誕生祭の最高幹部でなければ都の迷惑条例によりしょっぴいてもおかしくはなかった。
というのは冗談です。カクヨム誕生祭2020とても楽しいです。はい。
しきりに同僚の
「容疑者三人目は、ペンネームが『祭り最高』という人です」
もうそいつが犯人だろ。
被害者が「まつり さいこう」って書き残したんならドンピシャじゃないか。
位置関係的には、真田飼が列の一番前、黒軸目が列の脇、祭り最高が列の後ろから八人目にいたとのこと。
列というのは、例のカクヨム誕生祭のテーマ【最高の祭り】で短編小説を書き、提出するという、あの列である。
小説提出の列が、神社の入口まで並んでいた。1番最後に並んでいたのは、我らが筆者であった。投稿するのが遅いな。
「小早川、俺は犯人の正体がわかった。容疑者を全員集めろ」
「え! 本当っスか!? ちなみに容疑者は、タグ『KAC20202』で小説を投稿した人の数だけいるので、あと何百人かはいますよ」
「ええい! 全員ここに集めろ!!」
被害者は後ろから襲われていた。被害者との位置関係が推理のポイントだな。
それと、DM。きちんと4千文字以内に、事件解決せねばな。
【読者への挑戦】
ここまで読んで、真犯人が分かった人は、真犯人の名をメモしておいてください。
ここまでの間に犯人の名は出てきています。当たったら筆者の負けです。
では、続きをどうぞ。
「犯人は、この中にいる……!」
髭宮は声を高々にそう言った。
タグ「KAC20202」を付けている全ての作家がこちらを見た。そう、この祭りに参加した人の中に犯人がいるのだ。
「真田飼照代……、あなたは犯人ではない!」
ほっとした顔で真田飼照代は刑事を見つめた。
真田飼は被害者のずーっと前方にいた。被害者の後ろから襲うことはできない。
「そして、黒軸目仁、あなたも、犯人ではない!!」
黒軸目は、同僚の魚塚と合流したのだろう。特徴的な服を来て、二人して目を泳がせている。
彼らは違う意味で怪しい。副作用で身体が小さくなる薬を売りさばいているに違いない。
が、証拠がないので、今はまだ泳がせておこう。
「あなたがカクヨム誕生祭の最高幹部であることは、誰も知らないことだ。被害者があなたを『さいこう』と書き残せたはずがない!」
つまり、
「つまり、残ったあなたが犯人……、祭り最高さん!!」
タグ『KAC20202』を書いた作家が全て祭り最高さんの方を向きたかった。だが、誰が祭り最高さんなのか、誰もわからなかったので、仕方なく、刑事の方を見た。
「そう、あなたも犯人ではない。なぜなら、誰もあなたが『祭り最高』という名前だということを知らないからです。恨むならあなたの知名度を恨んでください」
「くっ」
列のどこかから悔しがる声が聞こえた。
はて。彼は列の後ろから何人目にいたっけ。忘れた。
「え、じゃあ犯人は誰なんですか? 先輩」
小早川は怪訝そうな顔で続ける。
「誰もそのDMに該当しないじゃないですか」
「被害者は『祭り最高』と書いたわけじゃなかったんだ。それは、途中だったんだ」
まつり さいこう につながる何か。
「『まつり さいこうび』って書きたかったんだ。だが、その前に力尽きた」
「祭りの最後尾って……じゃあ、犯人は?」
そう、名前がわからなくても、役職がわからなくても、誰もがその人の方に顔を向ける。誰もがその人を特定できる、それがダイイングメッセージだ。
タグ『KAC20202』を書いた作家が全てその人物へ注目のまなざしを向ける。
俺は、その人物へゆっくりと近づいて行った。
◆
テーマ『最高の祭り』ってなんだよ。
どうすればいい? 何も思い浮かばない。
皆勤賞を目指すには、どうしても書かなければならない。しかし……。
刻一刻と時間が過ぎ去っていく。締め切りまであとわずか。
列に並ぶ作家。僕は並ぶことはできない。何も書いていないから。
目の前を作家が過ぎ去っていく。手には何らかの小説。
僕も、僕もその列に並びたい。
その一心で、その手の小説に思わず手を伸ばしてしまった。
魔が差した。
やってはいけないことをしてしまったんだ。
その手の、何が書いてあるかもわからない小説を持ち、僕は列の最後尾に並ぶ。
手の中の小説を、読んでみた。
「(まだ考えてないけれど、とりあえず投稿してみた)」……だと?
僕は、こんなわけのわからない文章の為に人を殺した……?
つまらないプライドを守るために?
皆勤賞をもらうために?
刑事が謎を解く。
他の作家が皆、僕の方を見る。
終わった。僕にとって、最高の祭りが。
刑事の手が、僕の肩に置かれた。
こんなことになるなら、参加しないほうがよかった。
これが本当の、あとのまつりってやつだな。
『最高の祭り』殺人事件 完
【読者への挑戦のこたえ】
筆者の名前 『ぎざ』が正解。
当たったら、当然、筆者が犯人なので、僕の負けです。
もうこんなことしません。反省してます。
(注)締め切り日の23時59分に予約公開していますが、もし僕よりも列の最後尾に並んだひとがいたら、その人が犯人かもしれません。要チェック!!
他の作家に迷惑をかけないように、カクヨム誕生祭を楽しみましょう。以上です。
【読者への挑戦状】『最高の祭り』殺人事件 ぎざ @gizazig
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
同じコレクションの次の小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます