四年に一度とはいうものの

雅島貢@107kg

彼は、トップに立ったことを後悔することになった。一体なぜ?

「四年に一度とはいうけどさあ、俺らにしたら、毎回必ずだかんね」


「いや、お前が言うなよ。お前だけは言うなよ。だいたい、お前は1回は"やってない"からな?」


「チッ、ちゅうちゅうちゅうちゅう細かいことを言うんじゃあねえよ、俺じゃああるめえし。いやね、これがね、最初っから分かってる話だったらそらまあそうよ。俺が言っちゃあいけないって話になるかもしんねえけどよ。なんだか急に決まったろうよ。そらびっくりもすらあな。文句の一つも言わせてくれよ。

 つうかアンタもしつっこいなあ。いつまでも反芻してんじゃあないよ。大体、俺のおかげで『これ』を回避できてるようなもんだろうよ。あんたの知名度だって言ったら俺のおかげみたいなもんだろ? 他のやつら見てみろよ、大したエピソードもありゃあしねえじゃあないか。その辺歩いてるやつに聞いてみろよ、何人か抜けるぜ、ぜったい。そこんとこいきゃあ、俺とアンタはまあ大概は名前が出るものさ、それもこれも俺のおかげ、ってなもんよ」


「ちゅうちゅう言ってるのはどっちの方かね。全く。まあ、私は構わんけどね。ほれ、あの、例の旦那なんかに聞かれたら、それこそ噛み殺されっちまうんじゃあないかね」


「おいおい。やめてくれよな。いやあ、しかしよ、今からでもなんとかならんかね。旦那に入ってもらえば、俺も『毎回必ず』ってわけじゃあなくなるんだがねえ。ほれ、星組の奴らはよう、一回なんか入ったろ、ええとなんだったか」


「ああ、あれか。あれもすぐ廃れっちまったなあ。姐さんは『なんだい、アタシを単体で使えばいいじゃあないか』なんて、口調はアレだが満更でもなさそうだったのに残念なことだったなあ。まあ、でもだから、やっぱ新顔が入るってえのは難しいもんなんだろうなあ。諦めなさいよ」


「てンめえ、余裕あんなと思ったら、そういうことかよ。そうだよなあ、アンタらは星組の方でも世話ンなってんだもんなあ、こっちがどうなろうと安泰ですってか。ケッ、その態度が気に食わねえ。てめえは羊と一緒に犬に追われて牧舎に帰りやがれ。この万年二番手が」


「だからそれをお前が言うな。……いやまあ、星組の方は関係ないか。あれかなあ。こう、私はそういう星のもとに生まれているのかなあ」


「いや、アンタの星のもとに生まれるんだろうよ。アンタ自身はなんの星のもとにも生まれようがねえよ。何を抜かしやがる。はーあ、しかしよ、アンタみてえな呑気者だったら、一日くらい気にならねえんだろうなあ。羨ましいよ、まったく」


「いや、正直お前が気にするのがおかしいと思うよ私は。お前さん、わざわざ干支に入るために、なんだかんだ策を練って奔走してたじゃあないか。それをばなんだ、たった一日伸びたくらいで、ちゅうちゅうちゅうちゅうと」


「だぁかぁらぁ。言ったろ? ついこないだまで無かったじゃあないか。なんだい閏年って。勝手に変な制度を作るんじゃあないよ。猿も辰もなんだかぬぼーっとして黙ってるけどよ、毎回毎回営業時間が延びるんだよ。サービス残業ってやつだよ。俺ぁな、働くのが嫌だっつってるんじゃあないんだよ。勝手になんか新しいルールを作ってな、俺らだけ不公平に働かされているってのが気にいらねえんだよ」


 何もそんなに文句を言うほどのことかね――と言ったところで、こいつは結局、愚痴を言いたいだけなんだろうなと悟った牛はもぐもぐと反芻をしながら押し黙る。その頭の上で、鼠はいつまでもいつまでも、ちゅうちゅうと呟き続けていましたと、さ。

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