下町喫茶の思い出旅行

猛暑が続く八月初旬。夏休みに入って一週間経った女子大学生の葉山和(はやまなごみ)は、最近自分の身に起こった出来事から、いろいろな葛藤や悩みを抱えていた。そんな時、久しぶりに時間ができた和は、癒しを求めて、幼い頃から母とよく行っていた喫茶店に向かった。昼間は喫茶店で、夜にはバーとなる下町喫茶店さくらは、和にとっての心の拠り所である。
　しかし、喫茶店で和を迎えたのは、いつもいたおじちゃんではなく、爽やかな雰囲気を纏った男性で、和が慕うおじちゃんの姿は見当たらなかった。
　そして、彼は和が席に座ると、サービスと言ってホットミルクと一口サイズのアップルタルトを運んできた。最初は、驚き疑問を感じていたが、口に入れた瞬間幼い頃の記憶が蘇り、これがきっかけで和の人生が大きく動き出していく。
　そこから、…続きを読む