【15-19】親友と祖母 中

【第15章 登場人物】

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【地図】ヴァナヘイム国 (13章修正)

https://kakuyomu.jp/users/FuminoriAkiyama/news/16817330651819936625

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 王都に進駐した帝国軍により、各地の収容所は順次解放されていった。


 旧為政者たちの権力固めのために抑圧され、しいたげられてきた――そもそも罪状すら判然としない者たち。それらの釈放は、帝国が新たな統治者としてこの国を切り盛りするとの意思の現れでもあった。


 とりわけ、帝国避戦を唱え続けてきた父・エーギルの放免は、真っ先に決まったのである。


 カーリは、荷物を整えて待っていた。渓谷から収容所に戻ったエーギルは、事情を把握できていなかった。そんな父に急いでここを引き払うよう伝えたのは、娘の方だったのである。



 突如、監禁施設から解放されたエーギルは、身の振り方に戸惑った。


 ヴァーラス城塞は帝国に占領され、主家・ムンディル家は実権を失っていた。


 もっとも、領内のフォルニヨート家屋敷を焼き払った旧主である。いまさら、そのような者を頼ったところで、いわれもなき非難を被るのが関の山だろう。


【5-7】少女の冒険 ① 祭りの前

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 エーギルは、帝国との開戦回避にともに奔走した「避戦三兄弟」うち、「2人の兄たち」に、自身の無事を報告に向かうことにした。


 ところが、驚愕を禁じえないことに、軍務省次官・ケント=クヴァシル中将は往来で遭難していた。その後の行方も分からずじまいであり、軍務省では「次官死亡」で処理されていた。


【12-31】花びら ②

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 次官を支えてきた軍務省の者たちも、みな閑職に追いやられていた。


 やむなく、エーギルは農務省大臣・ユングヴィ=フロージのもとを訪れ、そのまま再就職が決まったわけである。


【15-2】持ちつ持たれつ 下

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 農務省に雇用された父は、娘と共にイエリンの視察に赴いた。帝国軍によって自治が大幅に許されていたこの地から、フロージは畑作・畜産の再生に着手しようとしたわけである。


 同地は、幼馴染の祖母の実家にほど近いことを、カーリは思い出した。


 こうして、少女は、マニィ=ムンディルのもとに立ち寄ったのである。






【作者からのお願い】

「航跡」続編――ブレギア国編の執筆を始めました。

https://kakuyomu.jp/works/16817330657005975533


宜しくお願い致します。



この先も「航跡」は続いていきます。


前話からフォルニヨート父娘の苦労をご理解いただけた方、🔖や⭐️評価をお願いいたします

👉👉👉https://kakuyomu.jp/works/1177354054894256758


カーリたちの乗った船の推進力となりますので、何卒、よろしくお願い申し上げます🚢



【予 告】

次回、「親友と祖母 下」お楽しみに。


第15章も最終話を迎えます。


「そうかい。あのくみした帝国の若者たちは、結果としておさんを救ったんだねぇ」

イエリンなまり丸出しの高齢女性は、ソルの祖母・マニィ=ムンディルであった。


書棚の一角には、写真立てが飾られている。そこでは、幼いソルが満面の笑みを浮かべていた。

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