【15-20】親友と祖母 下《第15章終》
【第15章 登場人物】
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【地図】ヴァナヘイム国 (13章修正)
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「そうかい。あの
イエリン
彼女はロッキングチェアに、やや肥満気味な身を委ねていた。
書棚の一角には、写真立てが飾られている。そこでは、幼いソルが満面の笑みを浮かべていた。
カーリは着座したまま背筋を整え、視線を幼い親友からその祖母へ戻した。
自分たちが囚われたあとの
為政者たちのなかに踏み込み、お
【5-14】少女の冒険 ⑧ 若作り 老い作り
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ヴァナヘイムという国家、その為政者・民衆に絶望し、自ら進んで帝国軍の虜囚に身を持ち崩したこと。そして、そこに居場所を見つけてしまったこと。
「……?」
マニィの大儀そうな様子に、カーリは違和感を覚える。彼女らしからぬ
昨年7月、マニィは帝国軍右翼壊滅の折、孫娘と婦人会を率いて将兵看護のため、帝国中軍に駆けつけている。
【8-23】敗走 中
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当時、マニィはイエリン郊外のこの生家に呼び戻されたばかりであった。末弟の当主が帝国との戦闘に倒れ、混乱する生家を立て直すために。
彼女自身、余裕はなかったはずだが、弟の仇たる帝国軍将兵の看護に尽力したのである――人命に人種も国境もない、と。
総司令官・ズフタフ=アトロンは、この時受けた恩を決して忘れなかった。
イエロヴェリル平原を再度北上した折も、イエリン周辺諸都市に掠奪や戦火が及ばぬよう働きかけたのである。
全軍に通達を出すだけでなく、イエリン城下の各所に、高札まで掲げている。識字率の低い帝国軍兵卒のため、高札は漫画をもって禁止事項が描かれるほどの徹底ぶりであった。
将兵看護のために訪れた帝国陣営にて、マニィは孫娘と別れた。
夜明けの露天病院――ソルは、このまま帝国陣営に残ると祖母に伝えた。
孫娘は言う。
そこには、大切な仲間がいるのだ、と。
そこには、大切な人がいるのだ、とも。
ソルは紅毛の青年将校に膝枕を許していた。そうした様子を見て、祖母は孫娘の恋情を悟ったそうだ。
帝国軍参謀部の副長は、蒼みがかった黒髪を持つ美しい女性士官だった。
お預かりしたお嬢様のご様子について――毎月欠かすことなく、彼女は手紙をもってソルの近況を伝えてくれた。帝国人でありながら、ヴァナヘイム語の
参謀見習いとして資料作成を手伝ってくれていること。
班長としてドリスの街に向かい、異臭騒動の謎を解いたこと。
【13-30】異臭騒動 下
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時折、軍機に抵触しそうな内容も記されていた。
孫娘は帝国陣営・祖母はヴァナヘイム国陣営と、2人は
話し疲れたのだろう。祖母による孫娘の語りは、一旦小休止を迎えた。
マニィは老眼鏡を外すと首にかけたチェーンに預け、参謀部副長からの手紙を胸の上で畳んだ。
庭園に面したガラス張りの部屋には、初春の陽光が降り注ぎ、外気を忘れさせるほどに温かい。
カーリはティーカップを手に取った。
収容所で鬱々とした日々を過ごしてきた自分とは異なり、親友の足跡はとても刺激的で魅力に富んでいた。
――すごく心配をかけちゃったみたいね。
農務大事や軍務次官に渡りをつけ、審議会にまで登壇していたとは、親友は相当無理を重ねたに違いない。
――ソルちゃんは、昔からとても頭が良かったけど。
それにしても、ヴァナヘイム国から飛び出し、帝国軍参謀として活躍していたとは、驚くほかない。
――それに、素敵な恋までしているなんて。
紅髪の殿方に、ぜひお会いしてみたいと思う。
あれこれ思索が止まらないカーリの足下に、パサリと何かが落ちた。
先ほどの手紙のようだ。見事な筆致が顔をのぞかせている。
「おばあ様、落ちましたよ」
「……」
マニィは反応しなかった。揺り椅子に
眠っておられるのだろうか――カーリは手紙を持ち、立ち上がる。
「おばあ様……?」
耳元で呼びかけても反応がない。
――ッ!?
少女は異変に気が付いた。
「おばあ様!?おばあさまッ!!?」
必死に呼びかけながら肩をゆすると、金鎖の留め金が外れたのだろうか、老眼鏡も床に落ちた。
誰か、誰か――カーリの叫び声が、サンルームに響き渡った。
第15章 完
※第16章に続きます。
【作者からのお願い】
「航跡」続編――ブレギア国編の執筆を始めました。
https://kakuyomu.jp/works/16817330657005975533
宜しくお願い致します。
この先も「航跡」は続いていきます。
マニィが心配な方、🔖や⭐️評価をお願いいたします
👉👉👉https://kakuyomu.jp/works/1177354054894256758
カーリたちの乗った船の推進力となりますので、何卒、よろしくお願い申し上げます🚢
【予 告】
次回からは、第1部最終章――第16章「
ミーミルの最後の戦いを見守ってください。
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