ラスト数行でドキリとする。まさか。いや、そんなはずは。

新進気鋭の美しい女優に憧れる靴屋の青年。
ファンレターの最後にしたためる言葉は「いい靴は相応しい道へあなたを連れていってくれるでしょう。そして僕はいい靴を作ることができます。あなたに相応しい、あなたのための靴を作らせてください」

ある日、憧れの女優が彼の店を訪れた。双子の姉とともに。

太陽のような妹。月のように寄り添う姉。
同じ顔でいながら、性格は対照的。
青年の心はしだいに、奔放な女優ではなく物静かな姉に惹かれていく。

そして起こる事件。
落ち着くところに落ち着いたと思いきや。
ラスト数行で私は混乱した。
え? まさか。いや、そんなはずは。

ドロリとしたサスペンスを思い浮かべ、しかし思い直す。
やはり双子は双子なのだと。対照的な姉妹ではあるが、似ている部分があるのだと。
負けず嫌いで見栄っ張り。それが姉妹の共通項なのだと。

でもまだ……私はどこかで疑っている。
まさか。いや、そんなはずは。そんなことは……ないよ……ね。