バレンタイン

白雪花房

第1話

『コウスケくんへ』


 青い箱にラベルを貼った。

 中にはハートのチョコがぎっしりと詰まっている。駄菓子屋で一〇円で買えてしまうような安さ。言うまでもないが、手抜きである。


 その日、家には男友達が遊びに来ていた。


「あいつに渡すのか」


 彼は露骨にがっかりとしている。


 思えば私は彼の気を引きたかったのかもしれない。

 それは無意識の行動だった。

 悪いとは思っている。なにせ、コウスケが本命ではないのだから。


 ごめんなさいね。

 お詫びに、あなたにはきちんと贈ります。

 丹精こめて作った手作りチョコを。

 それはきっと甘くて、熱くて、とろけるような舌触りなのだろうな。

 そう、自分で想像して、うっとりするくらいに。

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バレンタイン 白雪花房 @snowhite

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