本物の手触りがするファンタジー

竜という荒々しい生き物が森を闊歩する。
その竜を追い生活の糧にする人々もいれば、竜を神として祀る人々もいる。
そんな世界の物語です。

これから読まれる方のために申し上げておくと、この物語は決して「都合の良いファンタジー」ではありません。
わかり易いレベリングもないし、きらびやかな勧善懲悪もない。
むしろとても人間臭くて生々しい世界です。

だからこそ、物語からは鮮烈な手触りを感じることができます。
それは葛藤のザラつきであり、苛立ちの刺々しさでもあり、安らぎの丸みでもあります。
竜追い達のゴツゴツした手の感触でもあるでしょうし、竜の鱗や骨の硬い反発かもしれません。
読むほどに世界の感触は、きっとあなたの心を波立てていくでしょう。
その波は物語が持つ力。
繰り広げられる命を懸けた愛憎、その剥き出しのエネルギーが作者さんの手で丁寧に込められた証左です。

さて、ここまでお読みいただけたならば、どうぞ歩みを止めずに竜の住む森の中へとお出かけくださいますように。
読み終わったあとにはきっと、この世界の姿をもっと見たくなっていることでしょう。

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