第9話  疑問


 この一連の顛末てんまつを聞いて、私にはどうにも腑に落ちない事がある。


 一体Yさんと言う幽霊は何だったのだろうか?  

私には、悪意や敵意と言ったものは全く感じられなかった。


 Yさんの霊は呪ったり、祟ったりしたわけではなく、自分の居場所を探していただけではないだろうか? 墓の移転で居場所は無くなったが、移転先が分からない。 自分がゆっくりと眠るべき安住の地を探し求めて、彷徨さまよっているだけなのかもしれない。




 一連の状況を冷静に良く考えてみると、それぞれの異変は些細ささいな事で、辛いこともあるが、それに耐えられる心構えがあれば済むことだ。 Nの事故も、十分に安全管理を徹底して注意すれば防げたかもしれない。また、その後も本人の心の強さがあれば立ち直れたかもしれない。どれをとっても、心の弱さが歯車をあらぬ方向へと回してしまったように感じてならない。 


 問題は、強情を張って僧侶の儀式や読経を拒んだN夫妻の心のどこかに、Yに対する【負い目】があったのではないだろうか?



 人の一生には何度となく不幸や困難が続く時期が回って来る。それに耐えられない心の弱さ、隙間すきまに魔の手が忍び寄って来るのではないだろうか。そんな弱い心に隙間が生まれた時、まるで何かの合図の様に[優曇華の花]が咲き誇るのではないだろうか。



 現在の住宅環境を考えると、天井にはりが見えている家など皆無に等しい。 古民家や、そう言う造りにしたカフェやレストランでもなければお目にかかれないだろう。

 屋根裏や天井裏は点検用の小さな点検口てんけんこうが付いてはいるが、問題が起きた時に建築業者に見てもらうくらいだろう。家人かじんがいつも点検口を開けて確認している家など、まず、いないと言ってよい。


 だ・か・ら・・・。


 たとえ[優曇華の花]が咲いていたとしても、誰も見ていないから 〘 気が付いていないだけ 〙 なのかもしれない。



       あなたの家は、 大丈夫ですか?・・・・・




            [優曇華の花]   終わり  

                        

                           

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優曇華の花 高草木 辰也(たかくさき たつや) @crinum

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