「新生児が大量に死ぬから平均寿命が低くなっているだけ」とかよくいわれるけど、その実情ってどんな感じなの? ――中世の人口ピラミッド

curuss

第1話

☆サルベージできた諸数値


     平均寿命(世界)   乳幼児死亡率(5歳までの死亡率)


1000    24歳      参考数値なし 約30%が有力 ※1


1820    26歳            推定50%説も  ※2


1900    31歳              23%(日本)  


1950    49歳              10%(日本)


1999    66歳



※1

 西洋系の研究による。

 ただし、遺骨から計算しているので、やや信頼性に欠ける。


※2

 江戸時代研究系から。

 記録魔日本人の数字なので、かなり信憑性はある。

 しかし、それを世界標準とするのは問題。

 当時の日本は文明力が低いので、途上国の数値として考えるべき?

 また、明らかに高すぎるので、成人率と混同されている可能性も。



 1900年――明治期の新生児死亡率が8%ぐらいなので、中世ヨーロッパなどか下回ることはあり得ないでしょう。

 ……逆に大きくかけ離れてたりもしないさそうですが。

 江戸が明治に代わって33年、まだ全国へ医学を輸入しきれてないでしょう。中世の良い数字としても類似して?


※ 参考までに乳児死亡率は15.5%で、死産率は8.8%。


 定説によれば中世だと無事産まれた10人にうち1人は一月以内に死亡し、2人が一年以内に。

(やはり比率が明治期の統計と類似。もちろん、やや悪い数字ながらで)


 そして成人できる確率は2人に1人程度らしく、つまりは15歳でさらに2人減ります。


 これは、やや甘めな見積もり?

 作者には、もう少し厳しいように思えたりも。


        10人中


   0歳で死亡  1


 1歳までで死亡  2   (1歳までの平均は0.5)


15歳までに死亡  2   (1~15の平均は7)


   ――平均寿命――


    長生き勢  5


 となります。

 この長生き勢の平均を考えると、その時代の肌感覚が理解できます。

 そして全体の平均寿命が24歳なんですから――


 (0*1+0.5*2+7*2+α*5)÷10 = 24


 ∴ α=45


 ようするに成人できれば、1000年前でも45歳ぐらいまで!


 しかし、ここで統計に疎い方は「なるほど。つまり、当時の人は45歳ぐらいで死ぬのだな」と考えてしまいます。

 平均という数字は――


 50%前後のサンプルが超える


 という特徴を見落としてはなりません。

(一般的に中央値は、算術平均を上回りがち)

 ようするに想定ケースの社会は、全体で考えると――


 1/4が24歳から45歳まで生きて、さらに1/4は45歳以上の長生き


 となるのです。


※ いうまでもなく『レジェンド校長』などがサンプルに混じった場合を除く。


 15歳まで生存が50%から考えると『1/4が15歳から45歳まで』とするべきやも。

 ようするに若年層が死に過ぎて、『レジェンド校長』と逆の補正掛かっている状態。



〇ついでに出生数予想!


 中世の合計特殊出生率は4~5人が定説な模様。

 いま現在の5オーバーはアフリカに限るレベルで、アフリカ以外で3以上は見当たらないあたり、かなり高い数値と思われます。

 そして厳密な定義は違いますが、合計特殊出生率は女性一人当たりが生涯に産む子供の人数に限りなく近いです。


※ そもそも『一人の女性が一生に産む子供の数の平均』を狙った計算法


 また参照した定説も『成人できた女性だけを対象』としたのか『成人となる前に死亡した女性も含めた』のか不明。

 ここでは『成人できた女性が4.5人』と考えている


 女性というのは、ようするに人口の半分ほどいます。

 そのうち成人――15歳まで生存できるのが、産まれた人数の半分です。

 つまり、『全人口の1/4が生涯に4.5人の子供を産む』といえます。


 そして合計特殊出生率の15~49歳の女性という指針を参考にすると、『生涯で』というのは『34年の間で』となります。


 しかし、ここは15~40歳ぐらいとするべきでしょう。

 やや問題発言かもだけど、昔の食糧事情で40歳以後も生理があるとは思えません。

 一昔前は40歳の出産は高齢出産扱いでしたし?

 その場合、『25年の間で』となります。


 (人口÷4*4.5)÷25 → 0.045*人口


 ∴ 毎年、総人口の4.5%ほどの子供が出産される


 ……これ以上のペースでアフリカは増えて!?


 ちなみに、この推定はややガバめ。

 が、他に頼れる数値も無かったのでゴリ押しします(苦笑)



 話を戻せば、せっかく産まれても、一月以内に10%が死んでしまいます。

 さらに一年以内に20%がです。

(どちらも出産数に対して)


 また成人――15歳以上になれるのは新生児の半分、つまりは総人口と比較したら2.25%に過ぎません。


 そして45歳まで生存は1/4、人口比では1.125%です。


 15歳から45歳までの間に死亡していくペースとですら、45歳から75歳までに0%となります。

 さすがに現実的ではないので、実情的には60歳ぐらいが頂点でしょうか?

 しかし、人口ピラミッドの高齢部分は例外者の分布図のようなもので、中世あたりから100歳ぐらいの長寿例も。

 まあ、ここでは60歳あたりで打ち止め。それ以降は例外と。



 人口ピラミッド予想図


 1%=[][][][] ※ 心眼で右端同士を線で!


出産 [][][][][][][][][][][][][][][][][][]   4.5  %

 0 [][][][][][][][][][][][][][][][][     4.05 %

 1 [][][][][][][][][][][][][         3.15 %


 ~


15 [][][][][][][][][]            2.25 %



 ~



45 [][][][][                 1.125%


 ~


60 [                    ≒0%

   [

   [


 実際は『出産~1』までが一行だったりも。

 気になる場合、縦軸を正しく引き伸ばす。分かり難くなったら横の縮尺も



・把握の捗りそうな数字計算


 ――――


 0~ 1歳 小計  3.825%(簡易計算)


 1~15歳 小計 37.8%


15~45歳 小計 50.625%


 45歳以上 小計  7.75%


 ――――


 10歳未満 29.565%


 10代比率 23.2375%


  うち 10~15 12.05%  15~20 11.1875%


 20代比率 18.75%


 30代比率 15%


 40代以上 13.4475%


 計算してよいのは45歳まで。

 それ以上は定義してない推測で、計算するとバグる。




 意外と良いのができた?

 ちなみに現代日本は、いくつか特殊な年代はあるも、ほぼ各年齢毎に1%と考えればOKです。

 ようするにピラミッドではなくて、ビル状態(苦笑)


 そして「これ正しいの? ガバくない?」と思われる方も居られるでしょう。

 これは以下の方法論で全体数をだしています。


 ある小学校の全校生徒を調べるのに一年生だった時の同級生、二年生だった時、三年生だった時……と合計していって、最終的に全校生徒数としています。

 もちろん正解ではありませんが、近似値とはいえるでしょう。

 ……ベビーブームだの大災害だのを考慮してませんし、同級生が卒業時に半減とか普通はないですけど(苦笑)



〇応用


 中世の総人口100人の小さな村は、毎年のように子供が4~5人が産まれる。

 つまり、ほぼ常時一人は誰かしら妊娠している。

 毎年、男が一人、女が一人のペースで成人(15歳)

 戦闘も可能な男手――15~45歳は約25人いる。女衆も同数。

 15歳以下の子供は40名弱で、残る10名弱が45歳以上。

 ……もう十代から労働力となる必要あり?


 人口100万の国が、毎年15歳となった健康な男子――15歳男子の半数を徴兵した場合、それは5625人に過ぎない。

 徴兵期間を3年間としたら、その3倍で1万6875人。

 ローマのように10年としても、総数は5万5625人。


 人口1000万な大国の王が、救世主の誕生にビビり、その年に産まれた男子を虐殺。

 ……それって22.5万人だよ?

 いや、無理無理!

 やろうとしただけで国が傾くというか、どれだけ時間と手間かかるの!?

 ちなみにイエスの時は――ベツレヘムは人口300~1000人程度だったらしく、おそらく7~22人程度かと。

 ……これなら実現可能?

 人気エピソードだけど、パクる時は考えた方が良さげ。


 似たようなので死食とかも――死の星が太陽を覆い隠すその時、全ての新しい生命が失われるとかも、世界人口が1億として450万の新生児が死にます。人類だけで。

 ちょっと設定盛り過ぎでは?

(あれって死食の起きた年に産まれた全ての生命ですよね?)


 幼児皆殺しとか、特殊条件で死滅とかは、できるだけレンジを絞った方が辻褄合うでしょう。


『ラインハルト殿下は15~25歳男子の熱烈な支持を受けていた』

 細かい計算は省くも、表から導くと15~25歳な層は人口比20%強! その半分だから10%となります!

 中世では男だけに発言権があったことや、年配層にもシンパが見込めること、未成年者が圧倒的に多かったのを踏まえると、実のところ字面以上に圧倒的。

 政治形態にもよりますが、有権者での比率に至っては28%とすら!?

 ……むしろ歴代のローマ皇帝が人気取りに腐心した理由も納得?

 ナポレオンやヒットラーの立身出世も頷けたりも。

 なぜなら上手く若者を煽りたてられれば、権力の1/4を握ったも同然だから!

 そして共産革命とか、現代の我々が考える数倍は支持者がいた?

 ちなみに現代日本だと同条件でたったの5%。有権者に限定したら4.375%です。



〇あとがき


 ややダラっとしてますが、頭の中にあったイメージを明確にできて満足だったりも。

 ……個人的には想像以上に子供が多くてびっくり! 10人中3人の割合で10歳未満ですし!

 ちなみに現代日本は各年齢が1%理論で考えると、10歳未満は全人口の10%となります。

 中世はいまの3倍子供がいた!?


 これだけ適当な表でも、実はすごく貴重だと思います。

 『中世の人口ピラミッド』とか、そうそう転がってませんし。

 ……ソースは探し出せなかった作者の実体験(苦笑)

 また、自分でもいくつか新しい気付きがありましたし――


 多少のガバさより、全体イメージが把握できるかどうか


 の方が大事だったりしますからね。

 というか『毎年の出産数』が怪しく思えても、平均寿命24歳は担保されたモデルです。

 細部に想定ミスがあっても、大きくかけ離れてはいないでしょう。

 最後に――


 中世でもアラフォーは多くいるし、アラカンだって少ないだけで珍しくはない


 を結論として〆させてもらいます。

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「新生児が大量に死ぬから平均寿命が低くなっているだけ」とかよくいわれるけど、その実情ってどんな感じなの? ――中世の人口ピラミッド curuss @curuss

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