第20話 闇の策謀
ありうべき全てのパラレルワールドのワンノブゼム、クレープたちのファンタージェンも、もちろん牧歌的なお花畑などではなく、「闇の世界」というものがありました。
表の世界、平和と愛を謳う、民主的な政治体制を、カサンドラ公国も標榜していて、通常のエルフたちは、「闇の世界」については、ほとんど無知か、知っていてもそういうものは存在しないというポーズを装っていたのです。
敬虔な宗教国家のはずの 宗主国が、漁夫の利を目論んで、少し頓馬なオークたちを焚きつけて、スパイを送り込み、エルフとオークに仲たがいさせようとした、という事件の裏にも、この「闇組織」が絡んでいる…それはおのおおの国家組織のトップたちには周知の「公然の秘密」に近かったのです。
オークの国では、年中、クーデターや、暗殺事件が日常茶飯事で、政府のトップや体制もめまぐるしく入れ替わっているのが実情でした。
不安定な体制ゆえに軍人の発言力が強くて、文民は沈黙させられていました。いろいろな下部の政治組織が入り乱れていて、治安も悪くて経済は沈滞していた。ただ統一の体を守るための、恐怖政治、軍部独裁、警察国家という最も国民にはあらまほしからざる政情が、ここ数年は続いていたのです。
「… 国の、新しい総裁についてだが…われわれの差し金で決定されたことが気づかれんように、少し平和的なイメージの人物に振り子を戻してみてはどうか?」
「オークの国の内乱で、大量に武器やら医療品を消費させる、という我々の策謀にそろそろ民衆が気づきかけている。しばらく平和の飴をなめさせて、疑惑が雲散霧消するまで民主主義ごっこをうまく演じれる人物を選定しなくてはな」
「古い王族の子孫で、見るからに温厚そうな、政治的には立場が中立の、ワシントンという人物がいます。あだ名が”紅の
「その線で詰めていくか…エルフたちは敏感だ。戦乱に巻き込むには、慎重を期さねばならん。平和樹立のための一里塚…新しい建国の英雄・指導者ワシントンか。どこかで聞いたようなお話だな」
闇の顔役たちはふっふっふ、と黒い嗤いをさざめかせた。
<続く>
クレープ #エルフの王女にして美貌の閨秀作家の話を読みたい 夢美瑠瑠 @joeyasushi
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