C-LOVERS

作者 佑佳

70

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★★★ Excellent!!!

人は、それぞれが“舞台”の上に立っているのだと思います。それを彼らは教えてくれました。

他者に『本音』を告げることの恐怖
他者に『本音』が理解されないことの恐怖、伝わらないことへの歯痒さ、そして孤独感。

だがしかし。
他者を理解するためには自分から手を差しのべていかなくては。相手にばかり求めてはいけないですね。自分から歩み寄らなくては、相手も受け入れてはくれないでしょう。

彼らはそれぞれが心に傷やつかえ、トラウマを抱えていましたが、互いに出会い、触れ合うことでゆっくり時間をかけてそれらを癒してきました。

自分のことを万人に理解されずとも、大事な一人に理解して貰えたなら、これほどの安らぎと幸せはないことでしょう。

この世界で、誰か一人でもあなたを見てくれる人がいますように。そんな願いを感じる作品だと思いました。
そして足踏みし続ける私の背中を押してくれる作品でした。前進すること、なにかに一生懸命になることに、周囲からの通せんぼがあるとしても、“大切に思う気持ち”は欠く必要がないと思いました。

自然に涙が零れたのも、佑佳さんの想いによる執筆が成せる技だと思います。

★★★ Excellent!!!

 この作品を読み始めた時の第一印象は「奇抜」の一言だった。
 というのも、OPENING act を読むと分かるが、この作品が小説兼「舞台」に思えたからだ。私たち読者は、いわば「観客」ということになる。

 臨場感あふれる冒頭に魅了され、読み進めていくと、登場する主な「役者」は6人の男女。
 話が進むにつれて明かされていく彼らの境遇は、決して恵まれているとは言えないものだろう。そして、その境遇であるがゆえに抱えたコンプレックスは、とても根深いものだ。
 時にそのコンプレックスは、同じような悩みを抱えた「観客」たちの心を揺さぶることもあるだろう。かく言う自分もそのひとりだった。克服するには、自分から踏み込んでいく勇気が必要……と、頭では分かっていても、実践するとなると簡単には出来ないものだ。
 だからこそ、彼らにより共感することが出来たのかもしれない。

 時間をかけながらも、彼らはそれぞれ、自らのコンプレックスに向き合い、克服しようとする。共通するのは「ひとりで」ではなく、「みんなで」向き合っていくこと。改めて人との繋がり、絆が大切だと思わされた作品だ。

 次に彼らの舞台に魅了されるのは、そこにいる「あなた」かもしれない。
 あなたが辛いと思った時、笑いたいと思った時……舞台の「観客」として、客席に足を運んでみてはいかがだろうか?

 Clap your hands!
 あなたも彼らと一緒に、 It's Show Time!

★★★ Excellent!!!

「人を笑顔にしたい」という共通の目的をもちながらも、別の道を歩んでいる兄弟、YOSSY the CLOWNと柳田良二。
自らの夢をもちながらも自信を得ることができない、服部若菜と小田蜜葉。
人の心をも読みとる高い知性をもって生まれたがゆえにその立場に怯える兄妹、サミュエルとエノーラ。
この物語は、別の場所、別の時間に生まれた六人がSHOWという一つの舞台を中心として結びつき、それぞれの未来を見つけていく物語である――。

本作の作者、佑佳さんは私の友人である。親友といっても過言ではない。そんな彼女は多くの長編傑作を執筆してきた実力のある作家なのであるが、特にこの作品「C-LOVERS」は彼女のライフワークともいえる作品であり、今回完全版の封切りとなった。そうであれば読みにいかない理はない。20年の歳月をかけて一つの作品はどのような形に仕上がったのか、と大きな期待とともに作品を楽しませていただいた。
筆者はSNSや小説サイトを使って、多くの作家との交流を大切にする人物である。本作は佑佳氏らしい、というか、佑佳氏そのものだったのではないかと思えた。

まず簡単なあらすじに書かせていただいたとおり、本作のテーマは「結びつき」や「繋がり」であると思われる。異なる立場にある六人がふとした縁や意思によって結びつき、それぞれの役割を見つけていく。その中ではこれまでの人生で感じてきた恐れやトラウマのようなものがなかなか抜けず、キャラクターたちは苦しんだり怖がったりしながら相手と接していこうとする。火付け役となるのは、世界的に有名なパフォーマー、YOSSY the CLOWNだ。しかし彼はわかりやすい「主人公」という立ち位置ではない。彼が火をつけた先では、サムエニ(サミュエル&エノーラ)、若菜、蜜葉、そして良二が自らの意思で、手探りながらもキャラクター同士の関係を結んでいく。だからこの作品… 続きを読む

★★★ Excellent!!!

登場人物はほぼ、メインの6人のみです。6人だけ追っていれば大丈夫。ゲストは佑佳作品を知っていれば嬉しくなる程度で、知らないと話が分からない訳ではありませんよ。

6人はそれぞれ、過去に心の傷を負っています。何なら現在も尾を引いています。どうにかしたいともがく彼らが、お互いに『出会う』。

すると、変化していきます。傷を抱きながら、『仕事』を通して関係性を築いていき、ドタバタとデコボコしながら、いつしか気付くのです。

大切な人に。癒やされている自分に。前に現れた道に。

とにかく皆が、優しい。可愛い。本作あらすじにもあるように、コメディ→恋愛というストーリーのシフトが素晴らしく緻密で、1話から少しずつ重ねてきた気持ちが、ある時を堺に一気に開放されていきます。

全部解決します。本当に、魔法のように。自分の『価値』と、他者との『関係』。未来への『希望』。キーワードはこの辺りでしょうか。

読後、明るい気持ちになります。読んでよかったと心から思います。私は最後のシーンが大好きなのですが、あそこへ至る為には、やはり道中の彼らの物語は全て必要ですね。見事な構成、心理描写、そして台詞回し。丁寧に緻密に、長い時間を掛けて描かれたことは想像に難くありません。

けれど、ああもう少しだけ。
『あの漫才』を見ながらニヤニヤしたい気持ちもあります。

★★★ Excellent!!!

ちょっとそこ行くお客様、足を止めて見ていただきたい。

貴方の中に、閉じ込めたままの葛藤や、乗り越えられなかった痛みがあるのなら、是非ともこの物語の客席についていただきたい。

世界を股にかけるパフォーマー、ぶっきらぼうな探偵、不器用な笑顔のレディ、いまだ自分を知らない雛鳥、そしてたくさんの傷を抱えて生きてきた可愛い可愛い双子が、貴方にたくさんの気付きと涙をくれます。

いつかどこかで貴方が抱いた苦みと傷を、そっと撫でてくれるはず。

人が人を救い、救われて。
強くひとつの輪になって。
そんな彼ら、彼女らの作る舞台がきっと貴方に寄り添ってくれるはず。

どうか急ぎ足を少し緩めて、開幕のベルをお待ちください。舞台が終われば、きっと貴方も笑顔になるはずだから。

★★★ Excellent!!!

【物語は】
雑誌の特集に組まれた話から始まっていく。その後、成功への第一歩となるのだろうか。主人公の一人であるYOSSY the CLOWNが、インタビューを受けている場面へと変わる。この物語は、群像劇。

ここで、作中のあるセリフが胸を打つ。
「コンプレックスと上手く付き合っていくような(略)」のくだりのセリフにとても惹かれた。と同時に、このセリフ部分から彼のこれからの目標や、目的が明らかになる。それは輝かしいスタート。
しかし彼の成功(ソロデビュー)を喜んでいるものばかりではないようだ。意味深な場面からオープニングクレジットと移り、その後本編へ。

【各登場人物から見る、物語の魅力】
第一幕に入ると視点が変わる。
服部若菜という女性の視点から、YOSSY the CLOWNがどのような人物なのか明かされていく。この物語の面白さは、各登場人物がYOSSY the CLOWNに対し、どのような想いを抱いているのかというところにあると感じた。

服部若菜という女性は、YOSSY the CLOWNに対して憧れの気持ちを抱いている。その理由は、彼女が自身の笑顔に対し、コンプレックスを抱いているから。自然に笑えたのは彼の芸でのみであり、初めての経験だった。彼に憧れ弟子入りを決意し奮闘するが、あっけなく断られる。
しかし、必死に自分にできることを告げた時、あるワードが彼の心に引っ掛かった様だ。彼から”世界が認める凄腕マジシャン”を紹介してもらうこととなる。

彼女との出会いの中で、YOSSY the CLOWNは独特の話し方をする人物であると言うことがわかってくる。それが彼のスタイルであり、パフォーマンスの一つであるという事も。確かに彼は、人を楽しませることに長けている。それは、インタビューでのやり取りからも感じることが出る。しかし、本心では何を考えているのか分からないという印象… 続きを読む

★★★ Excellent!!!

 クールな道化師、彼に憧れ芸人を目指す女性、片付けの苦手な探偵、イギリス産まれの賢い双子、引っ込み思案な女子高生。
 個性豊かな六人が織りなす、お仕事系ヒューマンドラマです。

 ブランド服に身を包み、クールでスタイリッシュな芸風で世界を魅了する道化師パフォーマー、YOSSY the CLOWN。通称ヨッシーと呼ばれる彼のもとに弟子入りを希望し押しかけてきた、服部若菜という女性。
 弟子入りをあきらめさせようと説得していたヨッシーは、彼女の「得意分野」に興味を持ち、とある人物を紹介することにします。マジックを教えてもらえるはずが、なぜか紹介された場所は古びた探偵事務所で――?

 コミカルに綴られるストーリーが、いろんな角度から六人の関係性や、それぞれの過去、今の心情、隠された心の傷を少しずつ明らかにしていきます。
 誰もが過去に縛られ、臆病にうつむきがちな心を隠していて。
 けれど勇気を持って、明日に立ち向かおうとしている。
 誰かの得意が、誰かの不足を補って、一人では成せない「大きな夢」を現実のものにしていく。

 一人一人の不器用さや、優しさが愛おしい、癒しにあふれた物語です。
 家族愛、友情、恋愛の要素も各所に盛り込まれていて、じっくりと浸れる群像劇風のヒューマンドラマ。ぜひ、ご一読ください。