嗚呼、我が愛しの埋葬部

夏村木

嗚呼、我が愛しの埋葬部

埋葬まいそう部』

 長い歴史を持つ××学園には誰にもその存在を知られたくないものを埋葬めてくれる部活動があるという。

 教師のいない間だけ、色褪いろあせたカーテンの内側で少女たちの瑞々しい唇からこぼれるうわさ話だ。


 高校生として過ごす最後の夏。ざあっ、と鳴る青い竹林から焼けたアスファルト舗装に降り立つ。

 埋葬が終わった。

 日差しは肌をあぶり、汗ばむ背中は大学受験がせっついてくる。先ほどまで穴を掘っていたため純白だったソックスももはや泥色どろいろだ。空をつんざかんとばかりに鳴き叫ぶせみだけが「よくやった」と褒めてくれているように感じるのはどうしようもない喉の渇きのせいか。

松ヶ谷まつがや

 涼やか軽やかな友の声。

沢条さわじょう

 熱気ばかり吐き出される私の声。


「埋葬した手紙、書いたのは君だね?」


 少しだけ再び熱気を吐き出して、先へ先へと進む沢条の背中を目印に重い足を運ぶ。蝉はまだ鳴いている。ただ鳴いている。

「ねえ松ヶ谷。あの手紙のことだけれど、中身を読んでしまった。不真面目な友人でごめんね。いつ読んだのかは気にしなくていい。もう反省会をしても遅いのだし」

 十八かそこらしか生きていない女の噂話これ幸いと飛びついたのがそもそもの間違いだったのだろう。猛暑日を埋葬日に決めたことも、もうこの想いを口にするつもりはないのだからせめて見ていてもらうくらいと彼女を誘ったことも・・・・そもそもこんな想いを抱いたことが間違いだった。これは何の変哲もない自業自得だ。

「“実は自分が埋葬部の部長で、この依頼を最後に卒業することになったから親友として見届けてほしい”」

 いつの間にか随分と静かな夏になったものだ。

「アイスでも買おう沢条。このままでは熱中症になってしまう」

「ふふ、いいよ。ジュースも買おう。・・・くくっ、君が私に嘘をついたのなんてこれが初めてじゃない?ああ、あとあの手紙に込められた想いの七割ほどは私が既に知っていたものだったから、安心してほしい」

 暑さが少し和らいだような、逆にもっと暑さが増したような。

「ちなみに君が一番気になっていることについてだけれど、今回のことについて色々私が満足するまで吐かない限り、私からもう話すことはないのでそのつもりで」

 彼女の髪がふわりと舞い上がる。

 嗚呼、我が愛しの埋葬部。もっと設定をればよかった。

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嗚呼、我が愛しの埋葬部 夏村木 @huchinooku

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