閑話:九重紅葉の回顧録
【閑話:九重紅葉の回顧録】
昔から私――九重紅葉――は男性が苦手だった。
原因はこの無駄に育った胸のせい。
私にとってはただの脂肪の塊なんだけど、男子にとっては官能的で欲情を催すものみたいね。
小学生の頃から胸の大きかった私は、ずっと男性からの好奇の視線に晒されてきたせいで、徐々に男性に対する苦手意識が培われてしまったわ。
とはいえ、けして男性嫌いというわけではないの。
普通にイケメンは好きだし、学生の頃はアイドルに熱を上げていた時期だってある。
ただ、こと恋愛となるとどうしても一歩引いてしまうのよ。
二十三年生きてきて、告白されたことはそれなりにあったし、押しが強くて断り切れず、そのまま付き合った相手だって何人かいるわ。
でもそういう人とは、結局は長続きしなかった。
付き合いたての男性って、どうしてああもギラギラしているのかしら?
例えるなら――獲物を前にした肉食獣といった感じかな?
そういう男性の激しい感情を見せられると、私はどうしても相手を怖くなってしまうみたい。
今まで付き合った男性はそんな相手ばかりで、その態度に引いてしまった私から別れを切り出し、関係を終わらせるという事を繰り返してきたわ。
だから結局、誰とも深い仲にはなれなかった。
他にも私から好きになった相手もいたけど、『その人も他の男と同じなんじゃないか』なんて考えると、一歩踏み出すことができずに全て片思いで終わっている。
そう考えると私は、この年になるまでまともな恋愛をしてこなかったって事よね……。
さ、寂しい……。
だから王子野王子くんの事は、きっと本当の意味での初恋だったんだと思う。
彼に対する第一印象は『とんでもないイケメン』だった。
年下の、しかも学校の生徒だというのに、話をするだけでなんだかすごく緊張しちゃったわね。
とはいえそれは最初だけ。
いろいろな噂は聞いていたけど、接してみれば普通の男の子だと思ったわ。
胸ばかり見てくる王子くんに、こんなイケメンでも他の男性と同じなんだと分かって、ちょっとガッカリしつつも安心したりして。
そのあと、王子くんが相談として保健室にやって来るようになって、同じ時間を過ごすようになって……。
――気付けば彼と一緒にいる時間が、すごく楽しみになっていたわ。
今まで付き合った男性たちとは違って、彼と一緒にいる間は自然体でいられた。
それはきっと、私と王子くんが似ていたから。
優柔不断で平和主義、受け身だけれど押し付けられるのが苦手。
お互いそんな性格だったから、同じペースで交流できたんだと思う。
そんな関係が続く内に、私は彼を好きになった。
今までイケメンやアイドルに熱を入れる事はあったけど、それはあくまで憧れで、本当に誰かを好きになったのはこれが初めてだった。
生徒を好きになるなんて、自分でもまさかとは思ったけれど……。
でもやっぱり、これが私の初恋だったんだと思う。
――そしてそれは、初めての失恋にもなった。
王子くんから別れの言葉が出たとき、私は初めて、人があれだけ悲しい気持ちになれるんだと知ったわ。
絶望に心が囚われて、胸が張り裂けるなんて言葉じゃ足りないくらいの痛みを覚えた。
それからは自分との闘いよ。
――彼の事は忘れよう。
――先生と生徒の恋愛なんて、そもそも上手くいくはずがなかった。
そんな事を自分に言い聞かせ、何とか立ち直ろうとした。
そんなときに聞こえてきた王子くんの醜聞。
――今度は一年の現役アイドルに手を出そうとしている。
私が苦しんでいる間に、彼はもう他の女に手を出そうとしている――?
信じられなかった。
だって私の知っている王子くんは、そんな人じゃなかったから。
それとも私が騙されていたの?
本性を偽って、私の前では演技していただけ?
他にも校内新聞ではいろんな暴露記事を書かれていたし、そちらが本当の彼だったんじゃ……?
ウソ、そんなの信じられない!
だけど他にどう考えれば……。
――そういえば。
王子くん、変なことを言っていたよね?
呪いをかけられて、キスをしないと解呪できないとか……。
それが本当なら、彼の行動にも説明がつくけど……。
……いやいや、そんなわけないじゃない。
呪いなんてあるはずない、アレは私をからかっただけ。
あんな冗談を真に受けるなんて、私もどうかしてるわね。
そう……冗談……だよね?
――――――――――――――――――――
すみません、今回でストックが切れました。
今後は不定期投稿になります。
次のヒロイン分が書き終わるまで気長にお待ちください。
モチベ向上のため応援よろしくお願いします。
呪われ王子の恋愛コンゲーム! ~死にたくないので10人のヒロインとキスしようとしたらとんでもない修羅場に!~ usumy @usumy
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。呪われ王子の恋愛コンゲーム! ~死にたくないので10人のヒロインとキスしようとしたらとんでもない修羅場に!~の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます