概要
其処はまるでモノクロの空間だった。たった一つの窓から見える白銀と吸い込まれそうな深い闇、石造りの塔の冷たい壁。ただ其処に一人きりの彼女の、透き通った肌に純白を称える髪――静寂と孤独が支配する無彩の世界。暖炉の炎の赤だけが、存在する唯一の色彩だった。
高く聳え立つその塔が、果たして彼女にとってユートピアだったのかディストピアだったのか。憂い気に俺を見上げる瞳に、何を映していたのだろうか。
彼女の気持ち一つ汲み取らずに、衝動に任せて手を取った。たとえ悪役でも構わない。ただ俺と彼女を支配する世界から逃げようと思った。それは都合のいい免罪符に過ぎなかっただろう。
結局俺と彼女の間に在ったのはただ何でもない空白だけだったけれど、どうかこれだけは言わせてほしい。
あの日の俺の愚かで幼い、どうし
高く聳え立つその塔が、果たして彼女にとってユートピアだったのかディストピアだったのか。憂い気に俺を見上げる瞳に、何を映していたのだろうか。
彼女の気持ち一つ汲み取らずに、衝動に任せて手を取った。たとえ悪役でも構わない。ただ俺と彼女を支配する世界から逃げようと思った。それは都合のいい免罪符に過ぎなかっただろう。
結局俺と彼女の間に在ったのはただ何でもない空白だけだったけれど、どうかこれだけは言わせてほしい。
あの日の俺の愚かで幼い、どうし
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