後書き

― 西暦2020年8月10日


― 領地ならぬ実家に帰省もままならず、結局は自宅




 「樹静かならんと欲すれど 王国物語スピンオフ6」を最後まで読んでいただき、ありがとうございました。特に応援、フォロー、レビュー、コメント下さった方々には感謝の気持ちでいっぱいです。ご意見ご感想、真摯に受け止めております。皆さまの評価、反応がとても励みになります。


 シリーズ作を書き進めていくと、あのキャラもこのキャラももっと活躍させたいとか、この主人公のその後を書いてみたいとか、思い入れが沢山生まれてきます。色々とアイデアが膨らんで、あちらもこちらもという感じにスピンオフがが派生して王国シリーズは大ファミリーになってしまい、ファミリーはまだまだ繁栄、拡張を続けております。


 この物語はアレックスとケンの恋愛を軸に、ルイとアレックスの親子の愛を絡めて書きました。前作「ポワリエ侯爵家のお家騒動」を書いている時に、ルイに実の父親としてもう少し花を持たせてやりたかったという気持ちが大きくなり、ポワリエ三兄弟の誰かの話を書こうと思っていたのです。やはり父親と娘の関係がいいな、ということでアレックスが主人公になり、相手として「忍び愛づる姫君」のマルゲリットとダンジュの長男、ケンが選ばれました。


 題名は親孝行に関係した意味合いのものを選ぼうと考えました。結局は『韓詩外伝』からそのまま引用です。「樹静かならんと欲すれども風止まず。子養わんと欲すれども親待たず。往きて見るを得べからざる者は親なり」の所からまるまる拝借しました。要するに、孝行のしたい時分に親はなしということです。


 王国シリーズ第一作では終わらず、どんどんと続きを発表していた私ですが、いつか子世代か孫世代同士が結ばれる物語も書きたいなと思っていたのですね。その思いもこの物語を書くきっかけの一つとなりました。子世代同士では「忍び愛づる姫君」のマルゲリットとダンジュのカップルがいました。奇しくも彼らはこの物語の主役ケンの両親です。


 こんな経緯ですからもちろんこの話は前作「ポワリエ侯爵家のお家騒動」の連載中から構想を練り始めました。そしてずっと以前に完結していた「忍び」では番外編の座談会の時、既にケンちゃんは生まれておりました。自分の王国シリーズ作メモを見直してみるとアレックスとケンは同じ年に生まれたということを発見しました。ということでシリーズ作初の同い年カップルの誕生となったのです。


 最初はもちろんルイの正体は相手役のケンに知られてはいけません。ルイみたいな父親くらいの年の素敵な男性が女主人公の周りをウロチョロしていると絶対これはパパ活や不倫に見えるだろうなーという考えに最初に行き当たりました。そしてケンが酷く嫉妬するというあのエピソードが簡単に作れたのですね。


 そのケンも、庶民として暮らしているとはいえ、実は母親は貴族で父親は間者だということをアレックスにきちんと伝えていませんでした。そのせいでアレックスはヴィオレットちゃんのことを彼の奥さんだと無駄な誤解をして悩むことになりました。どっちもどっちですね。


 アレックスの第一印象でケンは変な歌ばかり歌っている呑気な奴というイメージです。私は第一話で能天気な雇われ用心棒にお嬢様との対比を強調したくて、ケンに下手な?歌を歌わせてみたのです。「あ〇さ二号」の替え歌にあまりに読者の方々が食らいついて下さったので、私も調子に乗ってもっと歌わせてみることにしました。


 連載開始当時、実は四曲だけしか歌っていなかったケンでした。しかし、出かける度に色々と歌い出す人になってしまいました。そしていつの間にかデュオのアイドル、ピンクダンディーを警護団のミゲルくんと結成。その上、ミショケンとして警護団ダンサーズを引き連れてサンバも歌うまでになってしまいました! 替え歌を考えるのも時間がとられたけれどやり甲斐がありました。


 こんなお遊びも楽しいですし、シリーズ作ならではのキャラ関連付けも醍醐味であります。ケンの素性を読者の方々に隠すために、ケンには自分のことをあまり語らせませんでした。それでも作品中至る所に彼の身元を特定するヒントを散りばめておきました。彼は父方の優秀な間者の血だけでなく、母方のソンルグレ家、ルクレール家の血も濃く引いております。素っ裸で家の中を歩き回るところがその一つですね。


 今作では主人公二人が気持ちを確認し合うと婚前旅行をし、行き先の別荘で結ばれます。王国歴もだいぶ下り、シリーズ本作から既に孫の世代になっていることですし、ケンは庶民の感覚も持ち合わせていますから、婚前交渉には抵抗なくなってきているとお考え頂けるとよろしいかと思います。


 さて王国シリーズ作も12作!無事に連載完結いたしました。そろそろ区切りをつけたいところですが、もう少々ネタが頭の中にあるのです。前作の時も同じことを申しておりました。実はもう次作をほとんど書き上げております。まとまったら連載を始めますのでそちらも読んでいただけると幸いです。




           合間 妹子

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樹静かならんと欲すれど 王国物語スピンオフ6 合間 妹子 @oyoyo45

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