第132話 恋人ができないのは人間的に欠陥があるから


「恋人ができないのは人間的に欠陥があるから」


 僕はこの言説に半分同意します。僕はおそらく何かが欠けています。それは自尊心であったり、自己肯定感であったり、経験であったり、ユーモアであったり、謙虚さであったり、色々な言葉に置きかえられる「なにか」です。


 僕は恋愛至上主義者ですので、恋愛ができないのは非常に苦しい。せめて「恋愛なんてしたくないし、独身の方が楽しい」という価値観だったら良かったのですが「恋愛をしたい」と思っているのに出来ないのは、自分に非があるとしか思えません。


 やっぱり、僕は女性からみて魅力がないんでしょう。おそらく生まれ持った内向的な性格と家庭のトラウマが影響していると考えています。


 毎日「死ねばいいのに」と言われる父親を眺め、「お父さんみたいにはならないで」と諭す大好きな母親の言葉に立ち止まっていた小学生時代。その時はふたりとも大事すぎて、何も言えなかったけど、高校生くらいで異常だと割り切れるようになりました。家族でも他人なんだと理解できたのは良い経験でした。感情コントロールの点で有益ですし、リアリスティックな考え方は今の僕を支えています。


 ただ、僕はお父さんに似ている部分があるし、お母さんが家から出て行ってしまう不安も覚えています。好きな人に憎まれ、離れてしまう怖さを味わうくらいなら、好きな人に近づかなければ良い。そんな思いも無きにしもあらずです。


 とはいえ、死んだ親のせいにしていつまでも甘えている人間も情けない。


 だから「ありのままの自分を受け入れる」「自己実化してみる」みたいなアドバイスの通り、頑張って勉強したり、海外駐在したり、体を絞ったりしてみました。結果、出来上がったのはパッと見のスペックだけは高い自己肯定感最低の人間です。


 僕が笑顔でいられるのは、褒めてくれる先輩や遊んでくれる友達がいるからですが、恋愛至上主義が邪魔をしてくるんですよね。「先輩はお前を恋愛対象には見てないぞ」と。


 だから、せめてその先輩や友達の価値観に沿う人になればいいかなと思い、ヒアリングを重ねたところ、すぐにできる対処法がありました。





 ――全身脱毛、始めました。


 なんかつらつらとツラみを垂れ流すと思ったか。甘いな。ただ「全身脱毛を始めたぜ」と言いたかったエッセイです。


 ヒゲ、全身、VIOの全範囲の医療脱毛で45万円くらいです。これで一生、剃り負けの肌荒れとか、髭剃りの煩わしさから解放されると考えたら、もっと早めにやっておけば良かったと後悔は絶えません。ただ、毛が抜けていくのが超楽しいです。


 一回レーザーを打ってから毛が生え変わる2ヶ月は待たないといけないのですが、待ち遠しさまであります。完了までは2年ほどかかりますが、それまでは鏡の前でニヤニヤしながら生きて行けそうです。


 まだ一回打ったくらいですが、圧倒的に楽です。掃除も楽、準備も楽、ついでに女子ウケも良い。自己肯定感を高めたい皆さん、全てが楽になり、肯定感高めることができるのは脱毛です。髭剃りが面倒ならやりましょう、脱毛。紹介しますよ。


 結論、必要ないところに毛があるのは人間的な欠陥です。

 欠陥をなくして、僕は恋人を作る。


 この話を海外に住んでいる先輩にしたら、変な宗教にハマったのかと心配されたのは内緒です。

 あんたの後輩と友達が原因だよ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

いつか変態になりたいキミへ Askew(あすきゅー) @Askew

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ