愛憎劇としては面白いがラブコメではない

結論から言えば、この小説は人間描写の生々しさや現実の理不尽を描くことに秀でており、報われない主人公が報われてモテモテになるようなご都合展開が嫌いな人ならハマる作品だ。主人公は信じた女に裏切られ続け、それでも懸命に愛を紡ごうと必死になっている。その泥臭いほどのいじらしさは、主人公を応援したくなったり、逆に未熟さが残る主人公にもどかしくなったり、裏切る女キャラに怒りを覚えたり、逆に共感することができるかもしれない。それほどまでに登場人物が生き生きと、そして生々しく活躍しており、WEB小説というより昼ドラないし韓流ドラマの脚本を思わせる高いクオリティを持っている。

良くも悪くも主人公は読み手と等身大であるがために、女達の底知れない強さ、人間の汚さ、自分ではどうにもならない過酷な現実に対処しきれず、そこに神(つまり作者)の手助けや読者の想像を超えた閃きを得ることも出来ず、ただ困難に足掻く中で傷付いていく。リアリティが高く、ラノベのような奇跡はこの作品ではほぼ起こらない。しかし愛憎劇としての面白さに注力したためか、話が進むにつれてラブコメとしての面白さは失われていった。

高校編を過ぎた辺りからのラブコメ要素は誇張抜きで全く無い。遂に結婚を決めた女からも裏切られた主人公は、独身のままアラサーを迎えて不特定多数の女をセフレにするほどの女性不信になるが…高校卒業後からここまで、笑顔で読みすすめた人はいるのだろうか?恐らく作者も含めた全員が、真顔で読んだのではないだろうか。

この小説のクオリティは高い。恋愛小説としては星3つ以上付けたいが、ラブコメとしては星1つか半分だ。

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