かつて尊続殺重罰規定なる法律が実在した。簡単にいえば、自分の親や祖父母を殺害した際通常の殺人事件より重く罰せられるという内容である。
現在は完全に撤廃されたこの規定、見直しのきっかけとなったのはある女性が実父に起こした殺人事件であった。
彼女は実父から性的虐待を受け続け、親娘で子供まで出産させられていた。その彼女に恋人ができ、激怒した実父は彼女を更に虐待した為、追い詰められた彼女は殺害のやむなきに至った。
これはフィクションではない。れっきとした実話である。繰り返す、れっきとした実話である。
さて、本作では主人公の境遇が大きな関心を引き寄せる。具体的な成り行きや結末は、実際に読んで頂くのが早いだろう。
必読本作。
当たり前でない現実を「当たり前」と思い込んで生きてきた主人公の少女。
あるきっかけで、彼女は同じ学校のある男子と接点を持ちます。
その少年との関わりの中で、彼女は自分自身の「異常」に気づき始め——。
強制的に教え込まれた行為を受け入れる以外になかった少女の心の奥の純真さ、清らかさ。
そして、その清らかさをしっかりと受け止めた少年の強さ、清らかさ。
「身体にもたらされた出来事」と「心」は無関係なのだ、結びつける必要はないのだ——そんな強いメッセージが、真っ直ぐに読み手の胸に響きます。
主人公の痛々しい現実と、二人の初々しく澄み切った心のやりとりのコントラストが強烈に胸を揺さぶる、心の奥深くまで染み込む物語です。