第143話 王の帰還と祭事
――― 大陸暦1547年 第12月の下旬 ―――
朝方、最初に幾つかの騎影を捉えたのは北側の防壁に上がって、高性能な可変倍率式の望遠鏡を
因みに彼らのいる歩廊は地上14mほどの高さなので、これに
「視野に入っても、ここからが長いんだよなぁ……」
「識別可能な範囲に到達するのを待つまでもなく、先触れが来るだろう」
「ははっ、そうでないなら、一波乱ですね」
「…
王都の対抗戦力がクラウソラスの二騎しかない時に何を言うんだと、現場責任者である分隊長が話し掛けてきた若い相手を
眼下に至った騎兵はフード付きの迷彩外套をばさりと外し、身に
「遠征軍の斥候隊で副長を務めるフリッツ・レイズだ! 王の帰還を報せに城へ向かう、
「冬の長旅、お疲れ様です。どうぞ、お通りください」
上下関係に厳しい軍組織の格付けに従い、自身よりも立場的に上の副長格に
裏側の両端に立っていた数名の衛兵から、軍式の略礼を受けた彼は散見される人々を巧みな馬術で器用に避けつつ、
その姿を城壁より見送っていた一人が嬉しそうに
「この様子だと行軍速度を歩兵に合わせているとしても、午後には陛下やライゼス様も戻ってくるでしょうし、
「と言っても、俺達は夕刻の交代まで北門に釘付けだがな」
「お役
砕けた調子で城壁歩廊の衛兵らが軽口を叩き合い、遠征軍帰還の噂を聞いていた王都の住民達も、何処か浮ついているのとは対照的に…… 待ち望まれている帰還者達の過半数は
寒さに震えながらも約二週間の行軍を続け、必要とあらば浅く雪の積もる山道を踏破してきた一般兵科の者達は特にその傾向が強く見受けられる。
最寄りの都市ヴィンタールの郊外で、到着時刻の調整も兼ねた野営を挟んでいたが、一朝一夕で蓄積した疲労が抜けるなどあり得ない。
『騎士王の帰還を
『ん… 少し温度差があるよね』
乗騎ベルフェゴールの疑似眼球を通して
客観的に考えると
そんな疑念を抱きつつ、外部拡声器の接続が切れているのを一瞥してから、多少の愚痴をぶちまける。
『寧ろ、王城の大浴場に直行して湯船へ浮かびたい……』
『ふかふかのベッドにダイブして、ぐっすりと昼まで寝たいかも?』
ほぼ同時に漏らした心の声は皆の共通認識だが、戦場に帯同できないイザナが騎士王祭に関する取り
致し方ないと腹を
「帝国のリグシア領ほどじゃないけど、こっちも犠牲者でてるのにね。何かさ、気持ちと噛み合わないものがあるよ」
同期の弓騎士ダーヴィと相棒の魔導士など、戦死者を
ただ、スヴェルS型一番騎に同乗しているイリアを含む誰もが敢えて触れず、各自の胸裏に留めて背負う
「彼らのお陰で救われた
「…… うん、善処するね、
やや沈んだ調子の返答を聞き、気を
逆らう理由も無いので素直に意図を汲み、同郷の少女を湿原地帯で保護してくれた二人に “フォローしてやって欲しい” と頼み込んだ。
「また、面倒なことを……」
「文句言わないの、無駄にツンデレを発揮しなくて良いからね、ディノ君」
根っこの部分ではお人好しな癖に憎まれ口を挟む弟分に苦笑しつつも、快諾してくれたリーゼに感謝を捧げ、乗騎を一定の歩幅で動かすことに傾注する。
王都北門に着くと清和源氏の “三つ葉竜胆” を原型として、西洋風にアレンジした紋章の旗を持つ二騎のクラウソラスと
------------------------------------------------------------------------------------------------
後書き
帝国騒乱編も終わりという事で、一時的に完結とさせて頂きます。
一度は中途半端なぶつ切りとなっていた本作ですが、何とか当初に考えていたプロットの部分まで物語を書き切る事ができました。
これも偏に皆様の応援のお陰です_(._.)_
私の作品に限らず、皆様の応援は『筆を走らせる原動力』になりますので、縁のあった物語は応援してあげてくださいね(*º▿º*)
戦禍切り裂け、明日への剣聖 ⚔ The Knight Wizards!! shiba @shiba764
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
参加中のコンテスト・自主企画
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます