家族サービス

白川津 中々


 久々にピンクなサロンにやってきたらあら不思議。嫁が出てきた。


 

「なんでこんな所にいるの? お金は?」


「……へそくりで」


「ふーん。私先月誕生日だったんだけど、何ももらってないよ?」


 ふざけるな。誰がお前なんぞに物をやるか。ここはとぼけ通す!


「あっれー! そうだっけ!?」


「……」


「あ、すみません……」


 なんたる威圧感! 抜きは抜きでも魂が抜かれてしまう!

 と、そうではないだろう! こんな店で働くお前もお前だ! なぜ俺だけ責められなければならないのだ! いや攻められる店にやってきたのだからあながち間違いでもないがこれは要望していない余計なサービス! 断固として抗議せねば! 


「で、どうしてこんなお店で」


「あんたの給料が低いから」


 ぐうの音も出ない! その点に関しては本当に申し訳ない!


「いや、でも、こういうお店で働くのはちょっとやめていただきたいかなと……」


「下半身丸出しの人に言われたくないんだけど」


「ごもっともで……」


「まぁいいや。せっかく来たんだからするでしょう? ちゃっちゃと出して終わりにして頂戴」


 なんというムードのなさか。だいたいお前が相手してくれたらこんな店に来なくても済む話ではないか。俺は嫁と愛し合うのにも金を払う必要があるというのか。惨めすぎる。駄目だな。こけにされっぱなしでは男が廃る。一言ガツンといってやらねば。そう。ガツンと!


「チェンジで」


「あ?」


「じょ、冗談です! すみません!」


 寿命が縮まった! 射精ではなく射生だ! 勘弁してくれ!


「じゃ、始めますよー」


「あのー本番できますか?」


「うち、そういうサービスやってないんですよ」


「ですよね」


 俺は45分で6000円を失った後、嫁の帰宅後に5万円を徴収され涙を呑んだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

家族サービス 白川津 中々 @taka1212384

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ