酒に酔い、ひとり浅瀬で溺れる男の物語

とある男性の高校の頃の思い出、特に仲が良かったらしい『祐介』との友情のお話。
ある意味、『誰も幸せにならない物語』という表題の通り。何がというわけではないはずなのに、なんとなく息が詰まるような苦しさを感じます。
うまく見通せない深い霧の中を進んでいるような感覚。このお話が主人公自身による語りであることと(しかも酔っている)、文中の『別の世界線(パラレルワールド)』という表現。加えて、この作品自体の『現代ファンタジー』という分類もあって、まず何をどこまで信用していいのか、この足元の不確かさが特徴的でした。
文字の向こうから漂うアルコールの香り。なるほどここに幸せは一切ない、そう確信できる物語でした。