誰も幸せにならない物語
JN-ORB
第1話 - ユースケ①
あれは今から……何年前だったかな。
まぁ、細かい年数はどうだっていい。俺にもあんたにもどうだっていいことだ。とにかく、この話は俺が
……これから話す思い出は、全部俺の妄想だ、頭のおかしいやつって思ってくれて構わない。
頭のおかしいやつの戯言に少し付き合ってほしい。
今でこそまともな社会人の皮を被った振る舞いをしているが、今も昔も俺は頭の出来があまりよろしくなくてね、勉強があまり得意ではない。だから、15歳になった俺は市内有数のお勉強が出来ない連中が集まってくる高校に入った。
…ちなみに合格発表なんて見に行っていない。トモダチに「見に行くのが面倒だから俺の代わりに見に行ってくれ」だなんてお願いをして、合格発表を代理で見に行かせて、そして合格発表の掲示板の写真を撮ってもらって番号があることを確認した。
使える者は使う。そういう文化が育まれる地域だった。
そして入学式。入学式の会場である体育館の壇上では校長先生っぽい偉そうな人が喋っていたとき、いきなり隣に座っている奴が話しかけてきた。
「よう、俺は
「俺は
「よろしくなコータ。」
「よろしく。祐介は何組なんだ?」
「俺は3組だ、お前は?」
「俺は2組だ。隣のクラスだな、よろしくな。」
こんな感じの会話が俺と鮫島のファーストコンタクトだったと記憶している。
入学早々に、ステージ上で喋ってるおっさんを無視して隣にいる奴に話しかける程度にはそこそこイカれている奴だった。
自己紹介が済んだあと、連絡先を交換しようって話になったんだが俺はカバンの中に携帯を突っ込んだままだったので、後ほど連絡先を交換する約束をした。
ちなみにこのお話は時代的には携帯電話なんてのが普及し始めて、高校生でも持ってて当たり前になり始めていた頃だ。
入学式が終わり各々が教室に戻り、そして担任の先生から挨拶とこれからについて話をされて、そして午前中で解散。
内地の人間のために説明しておくと、向こうの四月なんてまだ雪が残っててもおかしくないぐらいの時期だ。桜なんて四月のうちに見たことなんてない。
排気ガスと土の混じったきたねぇ色した雪が路肩に積み上げられているんだ、新生活でウキウキした気分なんてそれを見ただけで消えて只々ゲンナリする。
…話を戻そう。
入学式が終わって、俺は鮫島と合流するために3組に移動して鮫島を探す。
「コータ!」
教室の真ん中あたりの机に座っている祐介に呼ばれる。祐介の周りにはもう既に何人かそれっぽい連中が何人かたむろっている。
「こいつはコータ、さっき仲良くなった。」
「よろしく。コータでいいよ。名前なんてーの?」
それぞれ自己紹介をして、これからどこに行こうかと打ち合わせを始める。
昼飯の時間が近いので近所にあるポス○ールで時間を昼飯を食ってゲームセンターで時間を潰そうだなんて話をしつつ、学校をあとにした。
そして昼過ぎ、ポス○ールに到着して安いチェーンのレストランに入り、「お前ドコ中?」と自己紹介で親睦を深める。中学の頃は何をしただとか、ドコ中のアイツとタイマンを張って勝っただとか、最近のマイブームはモ○ゲでナンパすることだとか…。今度ゲームをする約束を取り付けたり、ドリンクバーで色々な味を混ぜて罰ゲームをしながら夕方まで居座る。話疲れてきた頃合いを見てゲームセンターへ移動した。
入学式終わりってこともあって着慣れない学生服に身を包んだ新入生のような奴らが多い。
近隣には何個か高校もあり、他の学校の学生もそこそこの人数がいるため、入学式の日だからか学生服に身を包んだ奴らで賑わっていた。
「…なぁ、あいつら俺らのこと見てねぇ?」
唐突に祐介がそんなことを言い始める。祐介が見ている方向を見ると他校の新入生っぽい連中が確かにこちらのことを見ている。
「あー、確かに見られてるな。」
「ガン飛ばされてるんじゃねーの?」
明らかに苛々した様子でそいつらを睨み返している。このままだと状況的にかなりよろしくない。
「…ハナシしてくるわ」
入学して早々に地元で問題ごとなんて起こしたくなかった俺は何かあったときのための生贄となるためにその連中の方向に歩みを進めた。
「よう、なんかこっちのこと見てたみたいだけど、どうかしたか?」
俺が気楽な感じで声をかけると、連中は声をかけられると思ってなかったのか、少し目を泳がせながらも威勢よく答えを返してくる。
「お前らヤマ高の新入生だろ、ドコ中よ」
喧嘩腰のそいつらに若干うんざりしつつも俺はその返答に返す。
「俺は
「お、おぉ……そうなのか。俺は
「お互い地元じゃねーか、頼むわマジで。俺がいるときは俺に声かけてくれ。じゃあな。」
ちなみに、こんな感じで素行の宜しくない連中とつるんでいたが、中学も高校も俺は喧嘩をしたことがない。何故かそういった連中に気に入られてきていたが、俺自身はゲームが好きなどちらかというとオタク気質な平和主義者だったと思う。
自称平和主義者だからこそ、大体の面倒事は全て話し合いでケリを付けてきた。胸ぐらを掴まれるぐらいならまだ平和的だ。停学にも退学にもならないからな。
争いごとは画面の向こうだけでいい。
祐介たちのもとに戻ると、やるじゃねーか、なんてありがたいお言葉をもらった。
お前らのせいでろくでもない目に合うところだったんだぞ、と小声で独り言ちた。
正直なところ最初から最後まで勘弁してほしい。
こうして俺は高校生としてのスタートを切った。
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