第4話 ずっと一緒 

 結婚してから、私はサラリーマンの妻というものを1ヶ月した。


 その1ヶ月の間、私は、とても暇だった。毎日毎日、夫は仕事へ出かけてしまう。そして、帰ってきてもぼーっとしている。疲れているのだ。


 疲労困憊なのはわかっていたので、毎晩彼にマッサージをしていたし、食事の管理もした。けれど、それでも相当暇だと思った。(もっとも家事というものを完璧にこなせば、そう暇でないのは今となってはわかっている)それに、その生活は、酷く寂しかった。


 ところが、結婚して1ヶ月後、夫が倒れた。それから休職をして退職。彼は心身ともに酷い状態になっていった。私は、それから24時間ずっと夫と一緒だ。


 それからは寂しくなんてない。


 勿論、寂しい以外で苦しんだ。経済的な問題。夫の心身の問題。その他も。それは安易に誰かに伝えてはいけないほどの苦しみだったような気がする。


 けれど、それでも私は毎朝目覚めると幸せだった。無職で病気の夫をの寝顔を見つめながら、結婚してよかったと思ったものだった。


 それから、私たち夫婦は、体にも心にも無理のない生活をしている。ずっと苦楽を一緒にしてきた。


 もう取り戻せない健康も、もう取り戻せない若さも、もう持つことができない希望もある。時々、病というものがつきまとう自分の人生を、悔しいな、とも思う。


 それでも私は、ずっと一緒にいれる誰か、なおかつ、負や恥、弱さなど、あらゆることをシェアできる誰かがいるっていうのは、私にとって一番大事なことなんだといつも確認する。


 だって、二人一緒にいるのに寂しかったあの新婚1ヶ月目を思い出すと、ぞっとする。あれがずっと続くより、二人一緒にいて、あたたかい今の方がずっと良かったんだと必ず思うもの。


 ただ、二人で一人前の私たちは、どちらかがいなくなることを時々想像すると、二人して、ぞっとしている。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

私たち夫婦について AKARI YUNG @akariyung

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ