第3話 雨の日
小さな頃から雨の日が好きだった。
空から、「休んでいいよ」と言われている気がしてほっとした。気兼ねなく、家でゆっくりできたし、肩の力が抜けるのだ。
雨の日の紫陽花。雨の日のかたつむり。雨の降る前のカエルの大合唱。「あ、雨が降るんだ」という予感。そのどれもが好きだった。
勿論、そんなのんきなことを言ってられない豪雨というものも、台風というものもあるけれど。
雨の日の、緑の葉っぱを見るのが好きだった。まあるい雫が光る具合が。それがポタッと落ちる瞬間も。
雨上がりは、駐車場の車に乗り込む前にボンネットを見る。沢山のまあるい水の雫で、車はピカピカと光っている。とても綺麗。だから、そのまあるい水の雫を沢山つくるために、雨の日の前のワックス洗車は大事だ。
私が小さな頃、雨の日は、赤い長靴を履いてピンクの傘をさして、家の前の小道をよく歩いた。わざと、水たまりに長靴で入るそのワクワク!
ぴしゃんと水がはねるその音も、はねすぎないように微妙に足の力を調整する具合も好きだった。その全てが感覚的に好きだった。
大人になってからも、雨が降ると、ほっとする。
新婚の頃。ある雨の日に、夫が、「今日は雨か。休んでいい日だ」と言ったのを鮮明に覚えている。夫も雨が好きだというから驚いた。大抵、みんな晴れが好きだと言うから。夫は、私と同じように空から、「休んでいいよ」と言われているように感じているんだとか。
私たちは、似たもの夫婦だ。
好みが基本的に似ている。好きな食べ物、洋服、映画、ドラマなど。ほとんど全てが。だから、あんまり日常のことで意見が割れない。平和。それで、休日の雨の日は、「家で、二人でゆっくりしようか」ということになる。
やっぱり、私は雨の日が好きだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます