ロードレースの入り口となる補助輪みたいな小説

 ロードレースといわれて真っ先に浮かんでくるのは、もしかしたら「弱虫ペダル」かもしれません。しかしこの物語はもっと手前のロードレーサーの準備段階の話であるとか、自転車の乗り方であるとかの、もっと初心者向けのロードレース導入物語となっています。

 このレビューを書いている私も、漫画の弱虫ペダルと、ツールドフランスみたいな知名度の高い大会を動画で見るぐらいなのですが、この物語は「いきなりレースをされても、ママチャリとロードレーサーの違いがわからない」という人に最適だと思いました。

 さて物語に具体的に踏み込んでいくのですが、いわゆる再生物語であります。

 主人公はアマチュア大会で活躍した有名な選手です。しかしなにか事情があって選手を引退して、現在は教師をやっています。

 ヒロインについてはややネタバレになるのですが、糖尿病をわずらいながらも、ロードレースに打ち込む頑張り屋の女子高生です。

 この二人が支えあって、沖縄で開催されるアマチュア大会に出場を目指す内容です。しかもこの沖縄の大会には因縁があります。若いころの主人公が大活躍した大会でもあり、また主人公が選手を引退するきっかけでもありました。なぜ引退することになったのかは、まだこのレビューを書いた時点では描かれていないのですが、ただならぬ理由があったのは間違いないようです。

 そんな因縁のある大会に、ヒロインは出場したがっています。どうやらヒロインは選手時代の主人公のファンであり、彼の挑戦する姿勢に心を打たれて、糖尿病との戦いに抗えているという事情があるみたいですね。

 因縁だらけのアマチュア大会です。だから開催地である沖縄を示す「やんばる」という単語がタイトルに入ったわけです。

 まだ物語が途中なので、部活動としてのレースシーンにまで至っていないのですが、最初に触れたように、この物語の重点は「自転車(ロードレーサー)に乗ること」にあるため、かなりスローペースで進んでいくことになります。

 まだ文字数も少ないですし、この物語を読んで、ロードレーサーに対する見識を深めてはいかがでしょうか。

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