さざ波さながらに

 植物としての紫陽花は有毒だが薬用にもなる。また、花の色は土壌の酸性度に影響される。
 本作の主人公は、植物の紫陽花さながらに様々な面を見せてくれる。そして、まるで切子ガラスのコップに活けられたように心の展示室へ納められる。
 バイクに乗る彼女は十分に活動的で現代風なのは明らかなのに、静かで穏やかな……ある種古典的な雰囲気を作品全体から感じ取ってしまうのは何故だろう。多分、彼女が味わっている気持ちに共感し、いたわりながら見守ろうという気持ちが働くからだろう。
 潮騒にバイクのエンジン音が混じり、そのままそよ風に溶け込むような感覚である。
 必読本作。 

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