サンタに何するつもりなのっ!(後半)

静かに。静かに。

起こさないように。


ふふっ、勇者さま、子供みたいに寝てる。

もう、お布団、蹴っ飛ばしちゃって~!

風邪、引いちゃいますよぉ~

・・よいしょっ、と。


えへへっ。

おでこにちょっとだけ、ちゅっ、しちゃおうかなぁ~。

いつもイジワルするお返しだもん~

覚悟せよっ!


・・チュッ!


がし!


「きゃっ!」

「捕まえた」

「え!ゆ、勇者さま!お、起きてた?」

「いや。・・さては夢に現れる淫魔だな?」

「え?な、なに言ってるんですか?」

「我が愛しのリンちゃんに化けて出るとは笑止千万!」

「い、いえ。私です、わたし。本物のリンですよ?」

「ふん。本物のリンちゃんがコスプレサンタで現れるなんて、そんな都合の良い話があるものか」

「コスプレ?」

「コスチュームプレイ。すなわち『制服プレイ』だな。シチュエーションプレイの中核をなす重要なプレイだ。・・妄想を掻き立てる至極のプレイだよ」

「・・そ、そんな恐ろしいものだとは知らなかったんです、わたし・・」

「ふん、知らずに『サンタコスプレ』などといった上級プレイに挑むものか!」

「ほ、本当です!わたし、本当に何も知らずに!」

「ええいっ、だまれだまれ淫魔め!・・あ、サンタなら、リボンある?」

「リボン、ですか?・・使いかけですけど、どうぞ。でも、長いから切らないと」

「おお!ありがとう!赤いリボン!しかも長い!丁度いい!」

「何に使うんですか?」

「プレゼントを結わうんだよ」

「あ!お手伝いしますよ!」

「ありがとう。じゃあ、手を後ろに組んで」

「え?手を後ろで組む?」

「そう、ほら早く」

「え?えっ?・・こう?」

「そうそう」

「え?ど、どうして?」

「結わうから」

「え?なんで手を縛るんですかっ?」

「縛ってるんじゃない、結わっているんだ」

「いたっ・・ちょっと、痛いですよ」

「リボンだからね、しっかり締めないと緩んでしまう」

「だから、なんで私を?」

「ちょっと、じっとしててね」

「やだっ!そんなところ縛らないで!」

「縛っているんじゃない、結わっているんだって」

「もういいから!解いてっ!」

「ふん、淫魔のくせに。・・ジタバタしても無駄だっ」

「違いますっ!リンです!」

「本当に?」

「本当ですっ!」

「じゃあ、スリーサイズを言ってごらん」

「スリーサイズ?84、59・・って、勇者さまだって、私のスリーサイズなんて知らないでしょう?」

「え?・・あっ」

「まさか・・知ってるの?」

「いや。そうだな、僕が知らないのだから、これでは真偽を確認できないな」

「・・本当に、知らない?」

「じ、じゃあ、リンちゃんの本名は?」

「・・リン・アルテミアネス・リンレイ」

「うん。本物かもしれないなあ」

「本物ですっ!早く解いて!」

「せっかく結わいたんだもの。解かないよ」

「さっきはプレゼントを結わうっていったじゃないっ!」

「そうだよ」

「じゃあっ!なんで私にリボンを掛けるのよっ!」

「だって。プレゼントだもん」

「え?」

「僕へのプレゼントでしょ?サンタさんが持ってきてくれたんでしょ?」

「あの、私がサンタさんですよ?私はプレゼントじゃないんですっ」

「ちがうよ~!リンちゃんがサンタさんで、かつプレゼントなの!」

「違いません!プレゼントは袋の中に入っていますっ!」

「えっ!一度プレゼントを袋に入れろと?」

「ちょ、ちょっと。なんで私のこと、持ち上げようとしてるんです?」

「だから、袋に入れるんでしょ?」

「ちがうっ!もう袋に入っているの!プレゼント!」

「・・やばいな。縛った、いや、結わったリンちゃんを袋に詰めて、そして地下室に運ぶ・・・やばいっ!それ、いいっ!」

「なんで地下室なんか出てくるんですか!」

「だって、やっぱり地下室でしょう?いろんな器具があってさ。防音ばっちしで」

「なんだか怖いから嘘でもやめて!」

「こつ、こつ、こつって地下室へ続く階段をさ、袋に入ったリンちゃんを僕は担ぎながら下りていくんだ。リンちゃん、もぞもぞするんだけど逃げられない。階段を下りると重い扉があって、ぎぎっーと開けるとちょっとかび臭い石畳の部屋。あちこちに転がっている蝋燭に火をつけると、恐ろし気な部屋の全貌が明らかになりぃ・・」

「恐いからやめてっ!・・もういいでしょ!解いて!」

「えーっ!折角のプレゼントなのに?」

「プレゼントじゃありません!」

「ちょっと触ってもいい?」

「だめ」

「ちょっと摘まんでもいい?」

「だめ!なによ、つまむって!」

「そりゃ、摘まみたいよねえ?そことかさ、あそことかさ」

「どうしてそんなに変態なのっ!」

「変態?いや僕は変態だけどね、摘まみたいのは変態じゃないよ、通常だよ」

「通常じゃありません!」

「じゃあ、ちょっと町中のひとに聞いてみようか?『あの可愛い女の子の胸の先っぽを、あなたは摘まみたいと思いますか?思いませんか?』って」

「・・・もぉ、いいですよ・・」

「ホント!摘まんでいいの!」

「違う!・・やり取りに疲れただけです」

「摘まんじゃ、だめ?」

「だめっ!」

「じゃあ、触るのは?」

「だめっ!」

「キスは?」

「・・うっ」

「キスはいいの?」

「・・いえ。あの、だめですよ」

「ふーん。・・おでこにキスは、いいんだ?」

「・・っ!ずるい!勇者さま!起きてたのっ!」

「いや。リンちゃんのキスで目が覚めたの」

「・・・ごめんなさい・・・」

「謝る必要なんてないよ。リンちゃんの唇の柔らかさにハッとした!最高に気持ち良かった!」

「・・おでこにキスなら、いいですよ・・」

「嫌。それじゃつまんない」

「えーっ。じゃあ、ほっぺ?」

「そこもするけど、それだけじゃだめ」

「えっー!なんで!」

「だって、リンちゃんは僕の承諾なしにキスしたでしょ?僕もリンちゃんの承諾なしに、えいって、あちこちキスしたい!」

「・・ううっ・・へんなとこはだめですよ」

「リンちゃんの身体に、変なところなんてないよ」

「ちがうの!・・体はだめ」

「手の甲は?」

「あ、そこはいいですよ」

「・・・リンちゃん、体って、なにを想像したのかな?」

「・・もう。だって、勇者さま、えっちだから」

「・・それで、えっちな想像をしてしまったのだね?」

「・・ああ、もう。おねがい許して?今日はクリスマスイブですよ?聖なる夜なんです」

「性夜だな」

「聖夜です!」

「神聖なるものを穢す、最高の喜びだよね」

「穢さないで!・・お願い、解いて?せっかくですから、ケーキでも食べましょ?」

「リンちゃんを食べる!」

「だめっ!!!」



♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡




「ありがとうリンちゃん。最高のプレゼントだ」

「ああ、もう・・ひどいよぉ・・」

「おや?袋になにか入っているよ?」

「いたたっ・・・だから、それがプレゼントなんです!」

「なんと。プレゼント二つもくれるの?」

「ちがう!プレゼントはそっちだけ!」

「ふふ。はまだ開封していない部分もあるからね、リンちゃん。のプレゼントは、また時間を掛けて、たっぷりと楽しませてもらうよ」

「・・・ううっ・・もう・・解いて・・」

「おや?」

「・・・・・」

「これは?」

「・・・手袋です」

「おお!可愛いな!」

「・・ホントっ?気に入ってくれました?」

「うん!これ、いいじゃない!」

「ホントっ!勇者様の手の大きさに合わせたつもりなんですけど、どうですか?」

「おおっ!ぴったし!・・指が六本あるけど?」

「・・この一本は、私が握るんです」

「握りたい従者、だな?」

「・・・・」

「おや?」

「え?」

「この中指、これだけ妙に太いね?」

「ええ、そこだけ分厚くしてあるの。勇者様の、冷たくて・・」

「そうか、ありがとう!・・・分厚くて、指が曲がらない」

「え?」

「指をグーにしようとしても、中指だけ曲がらないぞ?」

「・・生地を厚くしすぎちゃいました?」

「・・・これはいい。グーにすると、自動的に『ふぁっく・ゆー』になる」

「・・・・」

「わははっ!魔物たちを挑発できそうだぞっ!」

「・・・直しますね。ちょっと返してください」

「いいよ!このままで」

「だめ!・・そんな、下品ですもの」

「いいよ!かっこいいよ!」

「だめっ!」

「リンちゃん、なんで『ふぁっく・ゆー』って、中指を立てるか知ってる?」

「知りません」

「・・・そのうち教えてあげるね。僕のこの冷たい中指で。・・リンちゃんの身体を使って・・」

「なんか嫌っ!もう!勇者様の変態!」

「変態だもの。・・ならば、早速やってみようか・・?」

「いやーっ!!!!」


・・・そうして夜は、更けていったのでございます・・♡♡




というわけで、Xmas特別企画『リンちゃんサンタがやってきた』でございました!


・・なお、こちらは『本編』とはまったく関係ございませんのであしからず。


これはあくまでも、勇者の、若しくは筆者の、ひょっとしてひょっとしたらリンちゃんの?・・夢の中なのか妄想なのか、『もう一つの世界』に過ぎません。


様々な『世界』が揺蕩たゆたい並びくねるそのひとつを、お楽しみ頂けたなら幸いです。


ではでは、皆様、今後とも『本編』をご愛顧いただければと存じます。


ありがとうございました~っ!

(完)

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リンちゃんサンタがやってきた! 呪文堂 @jyumondou

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