重厚にして爽快! 砂塵渦巻く西方国境域に銀髪の旋風が吹き荒れる!

とある高貴な少女の出奔。少女を縛り付ける束縛からの解放と、彼女が持つ「生」に対する矜持に震えつつ、物語は幕を開ける。

舞台は傭兵がたむろする街。視点はヒロインのルストをフォーカスしつつ、さり気なく物語の背景に触れて行く。くどくなり過ぎない程度、さりとて読み手を置き去りにしない、絶妙な匙加減で背景に触れつつ、物語はテンポよく先へ進む。

登場する人物は誰も彼もが言うに言えない背景を持つ者ばかり。無論、一筋縄に括れない歴戦の傭兵ばかり。そんな濃いメンツに囲まれて、時に対立し、理解し、信頼し合う。やがてヒロイン・ルストの輝きは、尚一層力強く光を発し始める。

いつしか読み手は砂塵渦巻く西方国境に誘われ、傭兵達と肩を並べる戦場に居る事だろう。我らが指揮官は、そう、あの旋風だ! さぁ旋風と共に、クライマックスまで駆け抜けろ!

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 と、自分が出来る限り興味を惹いて貰えそうな文章を冒頭に置きました。これから先は同好者としての感想です。

 まず世界観。フルスクラッチでゼロから世界を作る事は、ハイファンタジー作者の特権的な楽しみであって、創作意欲のかなりの部分を占めていると思います。その反面、心血を注いで造り込んだ世界を披露したくて、ついつい設定説明がくどくなりがち。まぁ、私の事ですが……

 でも、この作品には、そのくどさがありません。「丁度良さ」は人それぞれですが、恐らく「くどい……」と感じる人は少ないと思います。ただ、だからと言って世界観が軽薄薄弱な訳ではありません。(この作者様の場合、それだけは断じてないと個人的に思ってます)寧ろ、三日三晩寝ないで煮込んだダシの「ほんの上澄みの良い所」だけを掬い取るようにして作品中に登場させている。そんな贅沢さを感じました。

 このことは、世界設定だけでなく、登場人物にも言えると思います。とにかく、個性の濃い面々が、その個性を「チラッ」と「サラッ」と小出しにする。そして時が至れば、各自が持つドラマ性が要所要所でクライマックスを形成して、それが物語のテンポの一部となる。

 テンポの良さは戦闘シーンにも表れています。映画のカメラワークを思わせるような描写は時に俯瞰、時にズームアップ、描写の遠近を使い分けて、ヒロインや仲間達の活躍を鮮やかに描き出します。また、中盤以降の軍vs軍の描写も、こちらは戦記物好きも納得の仕掛けが凝らされていて、実に痛快です。

 ファンタジーのみならず、Webに作品を投稿している同好の皆さんにも、参考とする部分が多い作品だと、そう思いレビューいたしました。

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