ツインテールの生首と注射器

朝霧

悪の組織のツインテールは自分で自分の首を刎ねた、モブの私は吐いた。

 悪の組織の幹部と政府直属の魔法少女達の戦いは混迷を極めていた。

 人の学校の校庭で戦わないでくれと思いつつ、窓の外で戦う彼らを私は見ていた。

 ぼーっと眺めていたら、敵の幹部のうちの一人が魔法少女の結界の中に閉じ込められる。

 あれは確か中にいるものを浄化するんだっけな、とか思っていたら、敵の女ボスがその幹部に向かって一言。

「ハルカ。完全に浄化される前に死ね」

「はい! お母さま!!」

 彼は嬉しそうな笑顔でそう言って、躊躇いなくその細首を自らの手で断ち切った。

「……は?」

 間抜けな声が自分の口から洩れていた、冗談だと思った。

 ツインテールで重そうな小さな頭がころころと校庭に転がる、頭のない彼の首の切断面から赤黒い液体が冗談みたいに勢いよく噴き出した。

 静寂はたったの数秒、それ以降は驚愕と恐れによる悲鳴があちこちからやかましく上がり始める。

 それでも自分の口からはそれ以上何の声も上がらなかった。

 冗談だと思った、嘘だと思った、質の悪いジョークだと思った。

 今すぐにでも、頭を失い倒れた身体が動き出して、よいしょと転がった頭を首の断面にのっけてくっつけるんじゃないかと思った。

 それでからからと笑うのだ、いつものように。

 ついでに群衆に紛れている完全にモブな私を指さしてけらけら悪趣味に可愛らしく笑うかもしれない。

 だって、あんまりにもあっけなかったから。

 だけど、いくら待っても頭を失った身体は動かないし頭は汚い地面に転がったまま。

 キモチワルイ。

 その場に蹲り、胃の中のものを床にぶちまけていた。

 ついさっき彼に無理矢理口の中に押し込まれたクランベリーとチョコレートのマカロンと昼食に食べた焼きそばパンと胃液が混ざってどろどろになったそれを吐いて、吐いて、吐いて。

 胃がねじくれる、喉が引き攣る。

 苦しい、苦しい、苦しい、苦しい。

 なぜ。

 視界が白んで、遠くから聞こえてくる誰かたちの声が遠ざかって、消えた。


 悪の組織の幹部であるその少年に私が出会ったのは、今から数か月ほど前の事だった。

 といっても出会った当初は少女、それも美少女だと思っていたけど。

 だって、見た目がただの美少女だった。 

 セピア色の髪を重そうなツインテールに縛り上げ、身にまとうものは無知な私では何と呼んでいいのかよくわからないふわふわとした異様に可愛らしい洋服で。

 顔は小さく肌は透き通るように白く、緑色の目は大きくて形が良い。

 声も聴いているだけで骨が溶けていきそうなソプラノだった。

 誰があんな生き物を初見で男だと思うだろうか、少なくとも私にはそうは見えなかった。

 彼と出会ったのは自分の学校の校門の真ん前だった。

 時間は朝、試験勉強の為に朝早くに起きて登校したちょうどその日だった。

 やけに目立つのがいるなと少し注目してしまったせいで、私は彼に声をかけられた。

「ねえねえ、そこのパッとしないモブ子ちゃん。山崎博香の事、何か知ってる?」

「……いや、知らん」

 モブなのはその通りだが、なんで初対面の得体のしれない人物にそんなことを言われなきゃならんのだろうか。

 でもかかわりたくなかったのでそっけなくそう答えた。

 実際、政府直属の魔法少女の事なんざいくら同じ学校に通っているとはいえ、モブの私はよく知らなかったし。

 興味もなかった、主役共の面倒ごとに巻き込まれて喜ぶ類のモブではなかったし。

「何か知りたいことがあるのなら他を当たれ。じゃあな、可愛らしいお嬢さん」

 片手をひらひらと振って校門をくぐる、自分の横にいつの間にかツインテールが自分の横に並んでいたことに気付いたのは欠伸を噛み殺した直後だった。

「ちょっとつれなくないー? てゆーかさあ、君ってばボクのこと知らないわけー?」

 横を歩く不審人物の顔を数秒見て、結論を出した。

「知らん」

「えー? ほんとにー? あ! ひょっとしてモブ子ちゃんて呼んだこと怒ってる?」

「本当の事を言われて怒るほど心が狭い人間じゃないよ。厄介ごとにかかわりたくないだけだ」

「そら、他を当たれ」と、しっしと手を振って追い払おうとしたけど、それでもツインテールはついてきた。

「つれないなー、ほんと、つれない。かわいげなーい、愛想なーい。友達とか一人もいなそー」

「おう、よくわかったな。そういうわけだから、もっと人づきあいのいいやつ探せ? 私は忙しいんでな、お前みたいな美少女に付き合っている暇はないんだ」

 なんて言い合っているうちに校舎までたどり着いてしまっていた。

「じゃあな。お嬢さん」

 校舎に足を踏み入れて手を振ると、ツインテールはそこで諦めたらしい。

「ちぇー、この冷血女めー。……でも、そのいかにも無関心そうな冷たい目線、ちょっといいかもー」

「…………」

 なんと返せばいいのか考えるのも面倒くさくなったので、無言でその場を立ち去った。

「またねー! 不愛想なモブ子ちゃーん!」

 後ろでぶんぶんと手を振られているような気がしたけど、振り返ることはしなかった。


 それが彼との出会いだった。

 当時は彼女だと思っていた”彼”が彼であることを知ったのは、それから三日後の事だった。

 テレビで普通に悪の組織の幹部である男の娘だって紹介されていた。

 というか普通に有名人だったらしい。

 悪の組織のボスの息子、次男で上に兄と姉がいるらしい。

「……うわまじか」

 テレビに映るツインテールを見て、自分がなかなか面倒なものにかかわっていたことに冷や汗をかいた。

 厄介なことにならなくてよかったなー、と思いつつ、もう何事もない事を祈った。


 祈りは天に届かず、あの朝の出会いからたった1週間で私は彼と再会してしまった。

「ヤッホー、モブ子ちゃん! おっひさー!」

 学校帰りに古本屋になんか寄るんじゃなかったと思いつつ、笑顔でぶんぶん手を振る彼に溜息を吐いた。

「……お久しぶりだ、そしてさようなら」

「わー。めっちゃつれない。愛想ゼロパーセントの冷たい視線がたまりませんなー」

 とか言いつつ彼は私の横に並んだ、周囲がわずかにどよめくが彼が笑顔でどよめいた人達に手を振ったらしんと静かになった。

「何の用だ。いやなんでもない。用があると言われても困るからな。言うなよ何も、そして立ち去るがいい」

 歩くペースを上げる、ついてくるなと祈ったけど、やっぱりその祈りは天に却下されてしまったらしい。

「ほんっと、冷たいねー。ドライアイスみたい。こんなにかぁいいボクがせっかく話しかけてあげたっていうのに」

「知るか。余計なお世話だ。悪の組織の幹部とかいう超ド級の厄介ごとになんざかかわりたくないんだよ。面倒極まりない」

「あれー? ボクのこと知ってるのー? この前はなーんにも知らなそうだったのにー」

「少し前にテレビで見た。……そういや、男だって報道されてたが、本当なのか?」

「ほんとだよー。なーに? 男のくせにとか思ってるわけー?」

 この時の返答をもっと無難なものにしておけばよかったと後悔したのは、ずいぶん後の話になる。

 ……たぶん、こんなモブを彼が気に入ってこの先付け回すようになったのは、この時の私の言葉が原因だったのだろうから。

「いや別に何とも。心底どうでもいい。そういう格好が好きなら勝手にやってろ私にゃ関係ない。お前が美少女だろうが女装してる変人だろうが、私にとっててめーが厄介ごとである事実は残念ながら一ミリも変わらねーからな」

「…………ほえ?」

「なんだその間抜け面」

「……いや、なんかその意外で」

「ハァ?」

 意外とはどういうことだと考えて込んでいたら、ツインテールの彼が何故かやたらと嬉しそうな顔で笑っていた。


 その後もちょくちょく彼は私の前に現れた。

 週に数回のペースだった、もう少し抑えてほしかった。

 一生に数回とは言わないから、せめて一年に一回とかにしてほしかった。

 そんな願いを知っていたくせに、あのツインテールは私の前にちょくちょく現れて、そこら辺を引きずりまわった。

 やれあそこの喫茶店のケーキがおいしいだの、かぁいい服を買うから付き合えだの。

 そんな理由で引きずり回された。

 逃げようとしたことも何度もあったが、悪の組織の幹部様からただのモブが逃げられるわけもなく。

 ……まあ、悪の組織の幹部とかかわりがあると知られると面倒だからせめて変装してくれ、というこちらからの頼みを聞いてくれただけましか。

 いろんな話を一方的に聞かされた、私はそれに適当に相槌を打つだけだったが奴は何故か楽しそうにしていた。

 奴がマザコンであることを知ったのはいつだだっただろうか、盲目的に奴が自分の母親を信奉していることを知ったのは。

 ほとんどの話を聞き流していたから、よく覚えていない。

 死ねと命じられれば簡単に死にそうだと冗談で思ったことが本当になるなんて夢にも思っていなかったけど。

 彼との交流で印象に残ったことは驚くほど少ない、あのナンパされた時の事と、いつかおごってもらったあんみつがびっくりするくらいおいしかったことくらいしか、よく覚えていない。

 あのナンパ事件はいつの事だっただろうか、結構最近の事だった気がしたけど、よく思い出してみるとそこまで最近の話ではなかった。

 あれは奴の洋服選びに付き合わされて辟易としていた時の事だった。

 トイレに行くという奴を見送って、逃げるかどうか考えを巡らせつつ、そういやどっちに入るんだろうかと疑問に思っていた時に、私は見知らぬ男の二人組に声をかけられた。

 本当に知らない人だった、年齢は大学生くらいでチャラそうな感じの。

 話を聞いてみると、どうやらこの二人組は奴に気があるようで、同行者である私に声をかけてきたらしい。

 あの時の奴はぱっと見では悪の組織の幹部でありボスの次男だという事がわからない程度に変装していたから、普通にかわいい女の子だと思われたのだろう。

 めんっっっどくせ!

 ……と、心の底からシャウトしそうになったが、人目をはばかり舌打ちするだけにしておいた。

 適当にあしらおうと思っていたら男二人組が吹っ飛んだ、面白いくらい吹っ飛んだ。

「ボクの友達になんの用? なあに、こんな愛想なくてかわいげのなくてだっさい根暗女にナンパとか、わらえるんだけど」

 振り返ると素敵に可愛らしい笑顔を張り付けたツインテールが立っていた。

 素敵かつ無駄に可愛らしい笑顔のくせに、殺意じみた敵意がだだ洩れていた。

「むかつくんだけど。むかつくから殺してあげる。ああ、でもその前にその足の間にぶら下がってる粗末なものをへし折って千切ってあげる」

 可愛い顔でとんでもないこと言いだした奴に「悪の組織の幹部怖え」と思いつつ、私が何とかしなければ変な被害が出てさらに面倒なことになりそうだと奴の手をひっつかんだ。

「なぁに、モブ子ちゃん。放してよ」

「うるさい黙れ。私といる時に面倒ごと起こしやがって。これ以上の面倒ごとは勘弁してくれ……ええと……とにかく魔法少女とかサツが来る前に逃げる……!!」

 奴の手をひっつかんだまま、吹っ飛ばされて目を回している二人組とは逆方向に走り出す。

 ありがたいことに奴はおとなしく私に手を引かれてついてきた。

 しばらく走って、このあたりでいいだろうかと思ったところで立ち止まって奴の手を捨てるように手放した。

「お前なあ……!! いきなり人を吹っ飛ばすなこの馬鹿……!!」

 私にしては珍しく声を荒げて怒鳴るが、奴は特に答えた様子もなく私の顔を見下ろした。

「なんかすごくむかつく」

「そうかいそうかい、知ったこっちゃねーから理由も言い訳も聞かんよ……とりあえずだな」

 と、おそらくなんの意味も効果もない説教を始めようとしたが、奴の表情があんまりにも”無”でかつどす黒いオーラを感じたので思わず黙り込んだ。

「むかつく。すごいむかつく、びっくりするくらいむかつく。むかつくむかつくむかつくむかつくむかつくむかつくむかつくむかつくむかつくむかつくむかつくむかつくむかつくむかつくむかつくむかつくむかつくむかつくむかつくむかつくむかつくむかつくむかつくむかつくむかつくむかつくむかつくむかつくむかつくむかつくむかつくむかつく」

「うるせぇよ」

 ツインテールで重そうな頭を軽くはたいた。

 目覚まし時計みたいに奴は不気味に黙り込んだ。

 いや、恐いわ。

「……ボクね。別に君の事なんか一ミリだって好きじゃないの。友達だとは思うけど、友愛の感情は持っているつもりだけど。そういう意味の感情は一ミリだってないの」

「そうかい、一瞬なら私に関わるなって思ったけど、友達としては好きなのか」

「うん。ただのお友達。だけどね、すごくむかついたの、すごくむかつくの。いつか君が大人になって、ボクの知らないところでボクの知らない男に喘がされてるとこ想像したら、吐き気がするほどむかつくの」

 可愛らしいお口からとんでもないワードが飛び出してきたから、転びそうになった。

「おうふ……おま……よくそんな気色悪い事考えるな……」

「うん。自分でもどうかと思う。君の事なんて友達としか思ってないのにね。好きでも何でもないのに……」

 不思議そうな顔で奴はそう言って、私の顔を見下ろして口を開いた。

「ねえ、君――」


 彼が死んだ5日後に、その人が私の家を訪れた。

 あの人の姉が。

 あの人の姉は赤色のリボンで可愛らしくラッピングされた真四角のプレゼントボックスと、ピンク色のリボンが巻き付いた長方形の箱を私に押し付けてきた。

「弟の死後、こちらをあなたに渡すように頼まれていましたので。では、渡しましたからね。返却は受け付けません。ああ、それと廃棄することができないように強力な呪いがかけられているので、あきらめて手元に置いておくのが賢明でしょう」

 そう言って、お姉さんは立ち去って行った。

「……私と同い年の癖に、死んだ後の事なんか考えてんじゃねーよ」

 そんなことをひとり呟きながら、割と重さのある箱を部屋に運び込む。

 中身はいったい何だろうか?

 わからない、見当もつかない。

 なんで二つも用意されているのかも意味不明だ。

 そういえば来月に自分の誕生日があるから、片方はもしかしてそちら用に用意したものだろうか?

 なんて思いながら、まずは赤いリボンの箱を開ける。

 リボンをなるべく丁寧にほどいて、ゆっくりと箱を開ける。

 見覚えのある重量のありそうなツインテールが目に入って、すぐに箱を閉めた。

「………………」

 それから、数分停止。

 現実逃避にいろいろ考えて、最終的に成りきり用のかつらか趣味の悪い人形だという可能性を思いつく。

 意を決して箱を開く、軽く目を背けつつ箱の中のものを両手で持ち上げる。

 手触りが思いのほか柔らかくて、全身に鳥肌が立った。

 持ち上げて、箱から完全に取り出したそれを見る。

 大きな緑色の目と、目が合った。

 生きていた時と同じような輝きを保ったままのそれとたっぷり十秒目を合わせて、眩暈が。

 箱の中身は、あの時彼が自分の手で跳ね飛ばした彼の生首だった。

 生きていたころのような目の輝きと頬の柔らかさは悪の組織の謎技術によるものだろうか?

 そこまで理解して、その首を放り投げそうになった。

 すんでで思いとどまって、その首を箱の中にゆっくりしまって、すぐさま戸棚のガムテを引っ掴もうと走り出したけど、途中で眩暈が。 

 胃からハムのサンドイッチとたらこスパゲッティがせりあがってきた、耐えきれずに蹲ってそれを床にぶちまける。

 喉と胃が痛い、口の中が酸っぱくて、床と嘔吐物しかうつらない視界がぐるぐると回る。

 それでも、何とか立ちあがる。

 床の嘔吐物を何とかしたほうがいいのだろうけど、心情的にはあの首を先に何とかしたかった。

「……あくしゅみ、ほんと……あの、あくしゅみやろう……」

 呪いがかけられていると言っていた、廃棄することができない呪いが。

 つまり自分は生きている限りあの生首を後生大事に持ち続ける羽目になるのか。

 政府や魔法少女に届けても無駄なんだろう、どうあがいてもきっと自分の手にあれは戻ってくる。

 なら、二度と開けないように封印してしまったほうが無難だろう。

 よろよろと戸棚まで歩いて、一回転んで二回転びかけて、やっとの思いでガムテを引っ付かんだ。

 生首入りのプレゼントボックスにガムテをぐるぐるに貼り付けた後、もう一つの箱を見つめる。

 細長い長方形の箱だ。

 開けないでいるべきだとは思ったけど、開けずにいる事で何らかの呪いが発動する可能性もなくはない。

 だいぶ躊躇った後、意を決してその箱のピンク色のリボンもほどく。

 箱を開けて、中身を見る。

 中身はまたしても意味が分からないものだった。

 それは注射器の形をしていた。

 ご丁寧に可愛らしいリボンが巻き付いているそれを箱から取り出してみた。

 注射器、といってもずいぶん大きい。

 針も随分と太いし、普通の注射器ではない気がする。

 注射器といってもそういう形をしているおもちゃだったりするのだろうか?

 そういえば昔、注射器の形の器に水飴が入っているお菓子を買ってもらったことがある、ひょっとしてそういう類だったりするのだろうか?

 注射器の中にはすでに得体のしれない液体が詰まっていた、何かの薬なのか、それとも別の何かなのだろうか?

 と、そこで注射器の下にメッセージカードが入っていることに気付いた。

 メッセージカードを開くと、可愛らしくデフォルトされたツインテールの彼のイラストの横にある吹き出しに、女子力の高い丸っこい字で短い文が書かれている。

 それを私は読み上げた。

 しばらく意味がわからなかった。

「…………は?」

 液体がたっぷりと詰まった注射器を見下ろして、悪寒が。

 つまり、これは。

 いや、考えるな理解するな、ダメだ忘れろ。

 なかったことにしろ、今ならまだ間に合う、読まなかったことにしてしまえばいい、無知のままでいればいい。

 いいか、私は何も見なかった、読まなかった、これがなんであるのか全く理解ができなかった!!

 それでもまたその場に蹲る、げぇげぇと胃の中身を吐き出そうと身体が勝手によじれるけど、もう吐き出すものなんてひとかけらも残っていないらしい。

 怖い。

 なんなんだこれは、なんなんだこの状況は、なんなんだあの男は。

 狂っている壊れている怖い怖い怖い怖い。

 どうして自分はあんなものにかかわってしまったのだろうか。

 どうして自分はこんな化物に友達呼ばわりされていたのだろうか、どうしてそれを否定しなかったのだろうか。

 どうして、自分はこんな気狂いと平然と会話を交わしていたのだろうか。

 おぞましい、怖い、恐い、こわくてたまらない。

『ねえ、君――ずうっとボク以外の男と仲良くならないでね。仲良しの男が出来たら、君も相手もころしちゃうから』

 と、あの日言われた言葉が、聞こえた気がした。

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