ラブレター どこにいるともしれなかった、だれかもわからなかったあなたへ
針野六四六
プロローグ
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どこにいるともしれない、だれかもわからないあなたへ
はじめまして、こんにちは。
金橋中学二年、
まずはこの手紙を拾ってくれてありがとう。
あなたはどこにいる人ですか。
あなたのなまえはなんですか。
何にも知らないけれど、僕はあなたがこの手紙を拾ってくれて、大袈裟に言えば世界一幸せです。
誰にも届かないかもしれない、そう思いながら書いた手紙を受け取ってくれたのが、あなたで良かった。
心の底からそう思います。
自己紹介をしておきます。
それと、どうしてこんな手紙を書いているのかを書いておきます。
僕は兵庫県の少し寂れたところに住んでいてーーーー
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手紙を少女が握っている。
力が入り過ぎているのだろう、手紙は添えられた指に沿ってぐしゃりとシワだらけになっていた。
どこにいるともしれない、だれかもわからないあなたへ
そんな書き出しで始まった手紙を手に取って、
彼女は、泣いている。
「いい、のかな……」
ぽつりと呟く彼女の目は、微かな狂気に満ちていた。
涙をこぼしているのに彼女の口元はわずかに弧を描いている。
全然何も笑えるようなことがあるわけでは無い。どういう表情を浮かべれば良いのか分からないから、歪んでしまった口元が笑みの形に似ているだけ。
「こんなこと書いてあるんだから、良いんだよね……」
自らに言い聞かせるような声だった。
いや、踏ん切りがつかないけれど、やってしまいたいと、そう思ってしまっている彼女の心境からすれば。
彼女は自分で自分の背中を押しているのだ。
周囲を飛び回る光体が、頷きを返すように瞬いた。
身に纏う白銀の鎧が光に反射して煌めいた。迸る感情に当てられたのか、髪の毛がふわりと持ち上がり、
はたと彼女は顔を上げる。
その瞳に決意が宿っている。
椅子から立ち上がり、腰の聖剣を床に突き刺す。
準備は万端だ。
一呼吸、さっと目を通した手紙はこう締められている。
書き出しを繰り返し、彼女に宛てられた手紙の末尾にはこう記されている。
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どこにいるともしれない、だれかもわからないあなたへ
あなたのことが好きです。
大袈裟に言ってしまえば、世界で一番あなたが大好きです。
僕はこんなどうしようもない場所にいるから、遠くから祈ることしかできないけれど。
幸せになってください。
僕はきっと、幸せになったあなたのことを考えていて、ずっと幸せだから。
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ラブレター どこにいるともしれなかった、だれかもわからなかったあなたへ 針野六四六 @zakozasf
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