読んでいると、温かい湯気とともに温かいメロディーが聞こえて来るような感覚。冬にふさわしい、温かくて優しいお話でした。
奥さんに先立たれたおじいさんと、冬を求めて旅をする歌人との交流を描いた作品ですが、物語が進んでいくに連れ、胸がどんどんあったかくなっていきます。二人の交わす会話、二人のいる風景が優しさに満ちていて、溜め息がもれるほど素敵な作品だなと思いました。ラストが素晴らしいですね。素敵な作品をありがとうございました。
大きな感情の起伏を避けて淡々と重ねられていく描写が、星空の下の公園や、慎ましくも暖かい食卓、またラストの雪の情景にとても相応しく感じられました。厳かな冬の日の出来事――。そんな締めくくりの印象を受ける一編です。
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