※※※

「なんじゃ、またお主か」

 膜のはった丸い瞳が、落ちてきた娘を捉える。

「難儀なことじゃ。とうとう水底まで来おったか」

 寄ると、ほどけ出した化粧が水を濁らせていた。

 水かきのある手で残りの白粉を拭いとる。

 あらわになった娘の頬にはまだ赤味がさしていた。

 もう幾年も前から、度々池に現れては上澄みをさまよっていた娘。

「じゃが、これではちぃとも目が見えぬではないか」

 自分にはない柔らかな閉じ瞼を、撫ぜて「愚かな」と呟く。

「こんなことならば、さっさと魚にして喰ろうてしまえばよかったわ」

 深い水底には、水草の森が広がる。

 

 ぽこぽこと生れ出る水泡を、水草は一粒も手離すことなく一身に纏っていた。

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かみ結い【分割版】 いうら ゆう @ihuraruhi

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