水神に生贄として差し出される娘。その娘を中心に物語が始まります。ほの暗い風習が残る里村で過去の出来事の真相が明かされる中、娘は何を見て何を得るのか。幻想的な描写と胸詰まる、悲しい恋の物語です。
水神がすまう池にまつわる、哀しく寂しい空気に縁取られた作品です。水神の生贄に選ばれてしまった娘、彼女を想う男、池に佇む不思議な少年、そしてもう一人。それぞれが哀しみを抱え、生と死の狭間に立った先に見出した結論は何だったのか。無駄に感情を煽らず、淡々と場面の展開で引き込でいっているのがいいな、思いました。 願わくば、池に沈んだあの二人に幸あれ……。
贄となる少女とその影のような娘、美しい言葉で綴られたせつない物語。