流行りの曲を見送って、君への一歩を踏み出した
- ★★★ Excellent!!!
まずね、キャッチコピーが良いです。
「開いた瞬間に黒いじゃん? そしたらなんか溺れそうになるっていうか。」
これはもう気になってしまう。
サブタイトルも最高なんです。
「あいつが読んでいた本があったんだ。」
「あいつの瞳は宇宙みたいだったんだ。」
これだけで優しく美しい世界観がどこまでも広がってゆく。
読み始めてすぐに「変わった文体だな~」って思いました。
こういうタイプの文体に出くわしたのは初めてで、ワクワクしながら読みました。
どこにでもある文章を持ってきて綺麗に並べたのではなく、一から自分で考えて組み立てたような手作り感あふれる文章。
ふわふわしていて、つかみどころがなくて。
それなのに面白くて。
「ピッ。」からの三行に笑って、
アーティストの曲に言及する部分があまりにも名文過ぎて、
「駅前と学校の中は寒いんだ。」で泣きました。
そして後半。
もうね、曲で暖を取るという発想がすごい。
その発想どこから出てくるのでしょうね。天才ですか?
そしてそして!
「好きな人に本の読み方を教えてもらう」という最高のシチュエーション!
首尾よく意中の人とお近づきになれた途端、いきなり文学的な描写が始まるのも面白いw
そして、唐突に咲くハルジオン。
もう何もかもが素敵。
この二人のお話を、いつまでも読んでいたい。
丸ごと宝物みたいな作品です。