彼女の胸にあらかじめ秘められた言葉が、少年を求めたのかもしれない。

少女は本が読めない。文字に溺れてしまって。

でも彼女の言葉はとても詩的だ。溢れ出る比喩、描写、かろやかで自由なあらゆる表現。
読みはじめたときには違和感をおぼえるほどだった豊かさが、少年の台詞ひとつで心にぴったりと収まった。

彼女の胸にはあらかじめ、物語の言葉が秘められていたのではなかろうか。その言葉が、彼女に彼への興味を持たせたのではなかろうか。

読み終えた後でも文章の端々がリフレインするような、短くも読み応えのある作品でした。

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