最終回
1942年 12月 ベルリン
「アドルフ・ヒトラーだな?逮捕する」
「ふっ、日本人に逮捕されるとはな」
「うるさい、黙って歩け!すぐ八つ裂きにせんだけ感謝しろ!」
歴史上類を見ない快進撃を見せていた連合軍は年を跨ぐ直前にベルリン入城、前世では果たせなかったヒトラーの逮捕に成功した。
これは沙羅のメタ情報と、彼女が創設した忍者の功績によるものである。暗殺計画は既に変更されていた。自由ドイツ軍や自由フランス軍、イギリス軍、ポーランド軍でもなく日本軍に逮捕させたのは、各軍が彼らの心情を慮っての事である。
同時期 ホワイトハウス
『敵の指導者アドルフ・ヒトラーは本日、日本軍特殊部隊によって逮捕されました。ヒトラーの後継者達は我々に降伏の意志を示し、これで戦争は終わり、ドイツ国民はナチズムの手から解放されました。我々の勝利です!!』
終戦を伝えるラジオを聞きながら、沙羅はニヤリと微笑む。
「意外と早かったわね。でも、こっからが本番よウィンダム」
「はっ」
ウィンダム国務長官に頼むわねと視線を送る沙羅。
黄禍論信者の前任者をクビにして新たに据えた、親日派というわけではないが知日派の人物であった。
沙羅は彼にドイツ以外の各枢軸国との個別講和交渉や連合国各国との調整を任せる事にしたのである。
彼は見事期待に応え、翌年に連合国は早々にイタリア、ハンガリー、ルーマニアと和平を締結。
後は日本との秘密計画を実行するのみ・・・・・・
1945年春
前世では未だ続いていた戦争もこの世界では早々と終わり、沙羅も大統領の任期を二期全うし、その姿は合衆国から太平洋を挟んだ海洋大国、大日本帝国の首都東京にあった。
「いやー悪いね博さん。住む所まで手配してくれて」
「いえいえ。しかし、まさか本当に日本で暮らす事を決められたとは・・・・・・」
「アメリカにも家族はいるけど、やっぱこっちが落ち着くのよ」
「そんなもんですかね。でも沙羅さん、本当に二期で辞めちゃってよかったんですか?せっかく大統領になって色々出来てたのに」
「大丈夫よ、種は撒いといたし」
「種?」
「この間発表された日米安全保障条約とかもそれよ。あれは私の最後の大仕事。前世では今回みたいに完全対等な条約は出来なかったし・・・・・・それにさ、もう平時なのに三期目とか前例もないしね」
「元々友好国ではありましたが、エリザベス大統領就任以降の急速な日米蜜月の動きは、やはりあなたの策略ですよね?」
「そうね。ロシアもと思ってたけど、やっぱり私はこの二国で天下を取ろうと思ってる」
「その先にあるものはなんです?」
「それはね・・・・・・」
アメリカ合衆国、大日本帝国。列強の中では新興国の二ヶ国で天下を取ると宣言した沙羅。
彼女が見据えるその先にあるものとは・・・・・・
防人娘の見る夢は〜戦後編〜へつづく
防人娘の見る夢は 侑李 @yupy
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