日米秘密協定
時系列は遡り日米が第二次欧州大戦に参戦してすぐの頃、両国政府首脳陣は東京で秘密裏に会談を重ねていた。
「あくまでモンロー主義を貫いてきた合衆国が、我が国と秘密同盟・・・・・・一体何が起きているのでしょう?」
大日本帝国外相重光葵が、沙羅に率直な疑問をぶつける。
「重光さん、私は就任以来あなたがた大日本帝国との関係強化に取り組んできた。そして、それは何故か。アジア太平洋の安定には米日の協力が不可欠だから?確かにそれはそうだが、違う。満州国の利権を貰ったから?これも違う。友好国の同盟国だから?無論、違う。それは私が・・・・・・日本人だからですよ」
「は?」
「そんな顔になるのも分かります。本当の私はアメリカ人のエリザベス・ジョンストンではなく、平成八年生まれの井浦沙羅日本国陸軍上等兵曹、日本人なのです」
「女性兵士?それに平成という元号は聞いた事がないが・・・・・・」
「私達の時代では、当たり前に女も兵士として戦います。この時期に平成なんてそりゃ聞いた事はないはずでしょう、今から50年後の元号ですからね。あ、ちなみにこの事は吉田総理は勿論、お上にも完全にシークレットでお願いします」
「・・・・・・なぜ隠す?」
「その方がアメリカ合衆国大統領としてはやりやすいからです。それと、陛下や日本国民に、私個人のためにいらぬ心配をおかけするわけにもいかんでしょう」
「そうか・・・・・・で、これからの歴史はどうなる?」
「この世界ではもう既に私の知る歴史ではありませんが、これだけは言えます。我々連合国は今次大戦に勝利します。そしてこの戦争で疲弊し凋落する英仏に変わり、その後の世界を主導するのは、この合衆国と大日本帝国、そしてロシアの三国です」
「三国で世界を支配すると?」
「あくまで予定ではありますが」
「予定ね・・・・・・」
日米の秘密協定の内容書類と世界地図を見ながら、重光が呟く。
「戦争が終われば、この取り決めは公表します。ですが、今は帝国政府内でも箝口令を厳重にお願い致します」
「分かりました」
前世の記憶から、過度な民族自決や分割支配は余計な災禍をもたらしかねないと推測する沙羅。一体彼女は、戦後世界をどうしようというのか・・・・・・
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