13話~My HERO (後編)
「
」
「
俺はニヤリとして最初の『音』を作る。俺達の鉄脈術は音を物質に変える能力。その能力を使って。
「星が降るこんな日に!」
そう『音』を発した……いや、歌った瞬間。俺たちの周りから星の形をした硬そうな物質がチンピラ達の方へ高速で飛んでいく。その星達はまるで投げナイフのように身体に刺さる。
「うわあ!?なんだこれ!」
「いきなり星が飛んできやがった!」
「痛え……。」
俺はすぐさま俺は振り返り、裏路地から追ってくるチンピラ達に向かって再び『音』を作り出す。
「どんな壁にぶつかったって!」
すると俺たちの前に大きな壁が出来て奥からくるチンピラ達の進行を完全にシャットアウトする。これで挟み撃ちの危険性がなくなった。
「よし……これで……。」
「幻!」
柊の叫び声ではっとなる。見るといつの間にか星の弾からなんとかかわしたのだろう。1人の魔鉄製のバットを持ったチンピラが俺たちに向かってきてた。しかも不味い。いまから音の弾を使ってもこの距離じゃ撃つ前に懐に入られる。
「死ねええぇぇえええええ!」
やばい。と思った瞬間。
「おいたはダメよ♡」
そう言ってチンピラの影からさっと現れた人影がさっと首すじに向けて手刀を打っていた。「うっ」と言って倒れるチンピラ。
「マスター……?」
「マスターさん!?」
俺たちは思わぬ援軍に驚いているとマスターの影からぴょんと小さい影が飛び出してきた。
「うーん。初陣にしてはお粗末ね。まあ、無事で良かったわ、二人とも。」
「「西川先生!!」」
そう言えば西川先生とマスターは何故かペアだと言うことは知っていたが何故……?と思っているとマスターは珍しくため息を吐いて。
「あなた達が店を飛び出して行ったからやな予感がしたからあゆみを呼んだのよ。きっとこの辺りのゴロツキに襲われるかもしれなかったから。」
「……ごめんなさい。」
柊がそう謝ると西川先生は柊の頭をよしよしと撫でると。
「大丈夫よ。悪いのはここに倒れてるゴロツキと幻だから。柊さんは悪くないわ。」
「……すまん。」
「とにかくここから出て私達の喫茶に戻りましょ。そこで話をすればいいわ〜。」
マスターがそう促すので俺たちはボロボロのチンピラ達をそのままにその場を後にした。
「う……。」
ボロボロのチンピラ達は鉄脈術が解けて、血だらけになりながらもなんとか目を開けた。
「く……そ……。まさかあいつら契約済みだったとは……。」
「なあ……。」
するとチンピラの1人が思い出したかのように少し考えて。
「なんだよ?」
「あの幻って呼ばれてたクソガキ。これに似てねえか?」
そう言って写真を取り出してチンピラの1人にみせるとチンピラはさあと顔が青くなる。
「おま……!この人は……!」
「気付いてしまいましたか。」
その瞬間。日本刀だろうか?斬れ味鋭い得物でそのチンピラ達の首や胴体が一瞬で切断される。
「……え?」
チンピラ達は自分が死んだとも思ってないだろう。それほど速い手さばきで今の切断は行われていた。
そしてその切断をした男はボソッと。
「まったく……面倒なことになってきました。幻様の記憶も戻り、よりによって美羽様と契約をなさるとは……。」
「貴方が面倒って言うからよっぽどなのね。」
すると銀髪というよりは灰色かかったセミロングの髪の少女がその男に近寄る。外見的にその少女は魔女だという事が分かる外見だった。
男はふっと笑って。
「ええ、面倒ですよ。いかんせんこれで第2次渋谷大抗争が起こるということなのですから。」
「ふーん。でも貴方は楽しそうよ?幹也。」
幹也と呼ばれた男は笑みを崩さないままその少女に。
「楽しい……かも知れませんね。夢幻派の血を継ぐ幻様と戦うのは。」
「ふーん。ま、いいけど。」
そう話終えるとその2人は渋谷の裏路地の闇の中へと消えていった。
俺たちは蜃気楼に着くといつも通りマスターがコーヒーを作ってくれた。コーヒーの落ち着く香りが蜃気楼に漂う。カウンターの席に俺、隣に柊。俺たちの前にはマスターと西川先生の並びだ。
「んじゃ。どこから話そうかな。」
そう、柊が口を開いた。俺たちは固唾を飲んで彼女を見守る。
「私の本当の名前は加藤美羽。渋谷大抗争の防衛派のリーダーの加藤家の娘よ。」
「……。」
マスターはそれを聞いて黙ったままコーヒーを飲んでいる。一方、西川先生はただ柊の話を聞いていた。
「ただ加藤家はもう大抗争で負けちゃったからもう無いけどね。だから今まで通り柊って呼んでもらってもいいよ。」
「なあ、柊……。」
「なに?幻?」
「お前、あの大抗争で死んだんじゃないのか?なのになんで……?」
「それはね、あの日、幻と別れてアコースティックギターを取りに行こうとして私の家の人に止められたの。『これから抗争が始まるから逃げた方がいいって。』それで抗争が始まっちゃったから幻の家に行けなかったの。」
そう言って柊もコーヒーを口にする。俺ははあ、と息をついて柊を見つめる。
「それで、なんで抗争が終わって渋谷に戻ってきたんだ?千葉にいれば良かったんじゃないのか?」
「んー。それだと幻の魔女になれないじゃん!私幻の魔女になりたいから私戻って来たんだよ?そしたら幻がショックで記憶喪失とか……。
はっ!」
そう言って柊は何かに気がついたかのように真面目な顔からぱあーと明るい顔になったかと思うとニコッとして俺の顔を覗き込んできた。
「は!まさか幻!私の事そこまで好きだったの?いやー。モテる魔女は辛いですネ。」
「……。」
「イタッ!いきなり頭を叩くな!幻!」
「真面目な雰囲気を返せ!お前まじで昔から変わってないな……。」
俺はちょっとそっぽ向いて。
「まあ……おまえが無事で良かったよ……。」
「ん?幻?今の言葉。ひょっとして……。デレた?デレたよ!マスターさん!西川先生!聞きましたよね!」
「聞いたわよ〜。」
「聞いたわ。」
「ちょっとまってくれ。なんでお前らそんなに耳がいいんだ。ボソッと呟いただけだぞ!?」
俺はそれを言って、はあ、とため息を吐いて。
「それで。これからどうするんだ?お前。」
「ん?幻の記憶戻ったし……」
「それなんだけどさ。」
柊の話を遮って俺は話を進めた。
「実は戻ったと言っても完全に戻ってなくて。お前のことは思い出したんだがいかんせん他の事が思い出せないんだ。」
「「「そうなの!?」」」
俺以外の3人は驚いてそう叫んだ。俺は頭をかいて3人に頭を下げる。
「すまん。」
「謝ることじゃないわ〜。少しずつ戻していけばいいことよ〜。」
「マスター……。」
「そうよ、生徒が困ってるのに私達が助けないでいつ助けるのよ。」
「西川先生……。」
「幻。」
最後に柊が俺の手を取ってまっすぐ俺を見つめる。
「私が幻のこと、全部話してもいいんだけど。それじゃあ疲れちゃうからね。少しずつ話して行くからそれで思い出していこう。」
「柊……いや、美羽。」
「ノンノン!今の私は柊未来だよ!そこの所忘れないでね!」
そう言って柊はニコッと笑って。
「改めてよろしくね?げーん!」
俺は柊の笑顔を見て、ふっと笑う。
この笑顔がきっと、俺は好きなのだろう。
ユア・ブラッド・マイン 〜phantom vocal〜 ケンケン4 @kenken39
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