妻を亡くした90歳男性・茂。
心に決めていた目的を果たそうと出かけた際、認知症らしい女性に夫と間違われ、成り行きで行動を共にすることに。
会話は噛み合わず、足取りも危なっかしいご老人二人。
それでも読んでいて温かな気持ちになれるのは、二人が見せる素朴で優しい人柄と、そんな二人を心配し、手を差し伸べてくれる若い人たちの存在。
老いることは、そんなに怖いことじゃない。
こんなに素敵な出逢いが待っているかもしれない。
そう感じさせてくれる、明るく優しい物語です。
未来に不安を感じたら、ぜひこの作品を開いてみてください。
老いていくこと、呆けていくことは、人にとっては必然です。
それはきれいごとで済まされることばかりでなく、やるせないことや嫌なこともたっぷり含んでいます。
そんなところを書き出しながらも、不思議と優しく美しい物語です。
物語は一人の老人『茂さん』が初恋の人に会いに旅立つことから始まります。その旅の途中、自分を死んだ旦那さんと勘違いするおばあさんと出会い、ともに小さな旅をすることになります。
短い話の中で老いることの切ない感じ、戸惑う様子などが実にうまく語られています。そんな二人のたどたどしい交流、彼らを助けてくれる人も現れて、と物語は徐々に盛り上がっていきます。この老いた二人がみせる交流がなんとも純粋で、胸をうちます。そして最後に広がる美しい光景と優しいエンディング!
短い話ながら、心の温かくなる物語。
ぜひ読んでみてください!