ハードボイルドかつほのぼのとしたスペースオペラ

主人公は冗談や誇張抜きで、「大藪春彦氏の著作の主人公たちと比べてさえも」ハードボイルドな存在であり、非人間的でさえもある。
この主人公に比べれば「汚れた英雄」の主人公(レースに勝利すること以外には徹底的に冷血)でさえも「義理堅く、誰か人間に対して愛情を持つことがある」と言える。
あるいは「長く熱い復讐」の主人公でさえも「仇を殺すときに仇の妻子を巻き添えにすることに良心の呵責を覚える」分、本作の主人公よりはずっとマシな人物である。

が、その一方でほのぼのとした作品でもある。

主人公は間違いなく悪党なのだが、好き好んで悪事を働くわけではない。
「自分が生きるために必要な悪事であれば殺人さえも一瞬の躊躇無く行う」が。

そして「必要のない悪事は避ける。主に自分がどこかの星系で逮捕されたときのために」と言う行動原理がある。

主人公はある事情により人間性を喪失しているらしき描写もある。

しかし、そのような主人公を中心としていながら、また容赦と躊躇の無い殺人シーンまでありながら、安心して読み進めることができるふんわりとした雰囲気が両立している。


珍しい「ほのぼのとしたハードボイルド」である。是非一読をお勧め。

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