第2話 2019.12.24
あれよという間に年の瀬を迎えましたね。もうすぐお仕事納めでしょうか。
暑さや寒さが厳しい中でのお仕事はさぞかし大変だったとお察しいたします。年末年始は少しでも気持ちをゆったりと持って過ごすことができますように。
またこれがささやかながらクリスマスプレゼントとなりますようにと願いをこめて書きます。
あなたの風物の描写は、やはり詩を彷彿とさせます。おそらくあなたの血の一滴に至るまで、詩人としての精神がすみずみまで行き渡っているのだろうと感じます。
そんなあなたに、「あなたという詩人にあえて、ぼくはさいわいにも、ほこりにもおもいます」と評していただけたことは、私にとってなによりの賛辞です。
言葉を紡いでいるといろんなことがありますね。花泥棒に遭ったことも、まだ心の整理がつきかねていますが、それでもめげずに詩という花を育ててまいりたいと思います。
花は盗めても、種までは盗めない。愛情をかけて育てた時間や、園芸の腕までは盗めない。
そのように捉えようと思っています。
私は詩を書くとき、いつも蓮の花を想います。あなたのおっしゃるように、詩の生まれてくる場所は泥中のようにほの暗く、湿った場所です。そこにはあらゆる負の感情が渦巻いています。それでも妙なる花を咲かせるためにと言葉のリズムに身をゆだね、心の赴くままに筆を動かす。それが詩の最たる喜びだと感じます。
その泥中に張った根があるから花はうつくしいのだと私は信じています。
昨今はプロジェクションマッピングを使ったお花見などもあるそうですが、花は土に根づいているからこそうつくしい。命あるもの、終わりあるものだからうつくしい。
その花の命と日々向き合うあなたのお仕事は、これから先も損なわれることなく、この世の終わるときまで続いていくのだろうと思います。
家事のことをそのように評していただけて、たいへんうれしく思います。生活が乱れると心が真っ先に乱れますね。私は婚約者と暮らしていますが、なかなか行き届かないところもあって、反省しながら自分の病と向き合う日々を送っています。
できることはそう多くはありませんが、それでも彼の帰る場所を整えてあげることが精一杯のつとめだと思ってがんばります。
ここのところ詩を書くことは減ってしまい、代わりに俳句を詠むことが増えました。俳句は頭の体操にちょうど良くて、気鬱の病にも良いそうです。十七文字の小さな箱に言葉をぎゅっと濃縮させる楽しみがあって、それはちょうど私の詩に通じるものがあるように感じています。
季語という縛りがあるのも面白い要素だなと感じます。ひとつの季語から生まれる無限の俳句を想うと、ロマンを掻き立てられます。
私が詠み得ない句を人が詠み、人が詠まない句を私が詠む。そうして句の世界に広がりが生まれ、豊かな土壌を生み、花が育つ。そう思うとわくわくしてきます。
それでもまた詩を書きたいという想いはあるので、またどこかでお目にかけられれば幸いです。
まだまだ寒さが厳しい時期が続きますので、どうぞご自愛ください。
インターネットにいると、どうしようもなくやりきれなくなることも多いかと思います。
そういう時は真っ先にご自分をいたわって差し上げてください。
またいつでもあなたにお目にかかれることをお待ちしておりますので、お席をいったん外したとしても、安心して戻ってきてくださいませ。
森侘介さんとの交換日記 雨伽詩音 @rain_sion
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。森侘介さんとの交換日記の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
夢幻図書館/雨伽詩音
★8 エッセイ・ノンフィクション 連載中 12話
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます