第2話

記憶に残る父の顔はどれも困ったような、申し訳なさそうな表情をしてる。物心ついた時にはすでに僕の味方は一人もいなくて、自分の名前にある幸とはかけ離れた世界だった。ゴミが散乱して鍵のかからない家には、話しかけただけでヒステリーを起こす母親。小学校低学年までは話しかけてくれる子もいたけど、みんな僕のことを友達だとは思っていなかった。だけど今考えると、それまではよかった。誰にも干渉されずに、一人でいることがどんなに楽だったか。それを分からせてくれたのが櫻井剛志だった。何をしても上手で先生からも可愛がられていて、友達も冗談ではなく100人いそうな彼には僕じゃなくたって誰も敵わなかった。剛志のことは小学五年生でクラスが一緒になっていじめられる前から知ってたし、別に悪い印象もなかった。彼に迷惑をかけたわけじゃないのに、誰にも迷惑かけてなかったのに僕はクラスで厄介者扱いされはじめた。別に殴られたりしたわけではなかった。話しかけられずに教室で一人でいるのも平気だった。だが、自分が話しかけてそれを無視されるのはとても耐えられる痛みではなかった。自分がそこに存在することを否定されるというのはどこにも居場所がないという現実のを突きつけられたようで辛くて辛くて毎日涙が止まらなかった。教室では泣かずに静かに本を読んでいるのが僕にできる唯一の抵抗だった。彼から解放された三年という短い時間で僕は勉強や運動ができないこととバランスをとれるくらいの才能を見つけた。白と黒で構成された冷たいそれに触れて、音を奏でるのは誰にも教えられなくても勝手にできるようになっていた。

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resistance @usagi333

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