resistance

@usagi333

第1話

自分が他の奴らより「できる」と気づいたのは小学校高学年くらいだろうか。同じクラスの秋山幸生は要領が悪く、テストも毎回ビリだった。大体の人間っていうのは神様が気を遣って、勉強ができなければ、他の何かができるように作られている。しかし幸生は運動も、友達との付き合い方もビリで挙げ句の果てには、家も貧乏であった。そんな神様が二日酔いで作ったような幸生が、小学校という実力社会で酷い扱いをうけるのは必然であった。つまり、テストはいつも上位で運動会のリレーでアンカーを走って、休み時間には呼ばなくたって周りに人が集まる俺が幸生をいじめるのも必然なのであった。小学生というのは純粋でいて、なおかつ残酷なものだとつくづく思う。親から溺愛されて、先生の信頼も買っていた俺は幸生に直接的に暴力は振るわなかった。もし、殴ったり蹴ったりすると怪我が証拠として残ってしまうという小賢しい考えは、いじめの発覚を恐れるいじめっ子共通の考えだろう。同じことを考えた幼い俺は「無視」「ハブる」という精神的な暴力であり凶悪な力にたどり着いた。幸生以外のクラスメートはみんな俺に従い、幸生はすぐに孤独になった。休み時間は教室の端っこの席で本を読み、放課後になると誰よりも先にボロ家に帰って行った。幸生いじめは小学校卒業まで続けられ、そして誰にもばれなかった。隣地区の中学校に行った俺は、第一志望の高校に落ちて下から上まで多くのクラスを持つ私立高校に入学するまで幸生には会わなかった。

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