あとがき

 ……久しぶりにどす黒い部分が漏れてしまった。というのが正直な感想。

 まぁこれを見て影響されて似たような事件を起こす人ってのは万が一、いや億が一にも無いと言い切りたいけど今の世の中では問題になるだろうなぁ。




 正直、こんなこと現実に起こるわけがないんですよ。なぜなら弱者の怒りの矛先は99.999999%以上の確率で別の弱者かより弱い弱者というのが定番だからです。


 まず弱者は強者と会うこと自体出来ないし、会えてもボディガードが張り付いてるから近づいただけで追い返されます。

 運よく殺せたとしても遺族が大金はたいて雇った敏腕弁護士に飲み込まれるのがオチです。日本では弁護士雇うのも裁判を開くのもカネがかかるのです。


 その一方で自分と同程度かより弱い弱者というのは、すぐ会えてすぐ殴れる上に、裁判するカネも私的なコネも無いから反撃もしてこないという「早いうまい安い」の3拍子そろった最高の「娯楽」なのです。

 なのでわざわざ手間暇や時間をかけて強者に会うよりも、安近短の弱者をぶん殴る方を選ぶわけです。「争いは同じレベルの人間の間でしか起こらない」という昔の言葉は本当の事なのです。


 ……とはいえ低能先生がHagex氏を刺殺した事件が起きたり、前科持ちの被害妄想野郎が「俺のアイディアをパクりやがって!」等と言ってアニメスタジオに放火した事件が起きましたし、いわゆる「無敵の人」がぽつぽつ現れている現代では完全に0とは言えなくなってしまったわけでして、模倣犯を生むリスクは背負ってます。

(IDを200回以上も作り直した低能先生や幻聴を爆音で消していた被害妄想野郎が普通の人間じゃないというのもあるがそれでも、である)




 他にも「憎い相手を非人間化する事の恐怖」もテーマの一つとして盛り込みました。

 人を殺すのはためらうけど「人として持っているべき何かが欠けている人間ではない何か」なら一切ためらわずに殺せる。だから人というのは敵を「人間ではない何か」にすることで遠慮なく叩き殺せる土壌を作るわけなんですよ。


 戦中の話では「鬼畜米英」とかがそうでしたし、作中の主人公は「上級国民」を「寄生虫」呼ばわりすることで殺すことに罪悪感を全く感じていませんでした。人間は人間ではない相手にはどこまでも残酷になれます。

 この「憎い相手の非人間化」は非常に危険なことで、万が一にもこの作品を見ておぞましさを感じずに「上級国民が死ぬところを見てうさ晴らし」しているのなら、あなたかなり危ない状態ですよ。

 冗談も誇張も一切抜きでガチで真剣な話で。


 本当に、上級国民=「国会議員でもないのに不逮捕特権を持つ一握りのエリート層」という実際には居もしない相手に向かって歪んだ正義感に突き動かされて人ぶっ殺したんじゃ末法もいいとこです、ハイ。

 この小説はフィクションだから、良い子だろうが悪い子だろうが真似しちゃだめだからね。

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弱者の進撃 - 上級国民を駆逐せよ - あがつま ゆい @agatuma-yui

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