第153話 出発④ヒ・ミ・ツ
「お、おっほん。
賢者のせいで話が途切れたけど、いいッピか?
これからご主人は世界の危機を救うオクリビトの使命を果たすため、一緒に働いてもらうッピよ?」
「使命とやらはいまだにピンとこないけど、仕方ないか」
「ちゃんとサポートするから安心するッピ、神獣の僕がいれば大丈夫だッピよ」
「……ずいぶん寝坊したのに?」
「ぐぬッ⁉それはもう言わないで欲しいッピ……」
ブーランジュ王国にある店に帰ったらやりたい事、試したい事がたくさんあるんだけど使命とやらもあるし、この先大丈夫かな?
「任せてください!アタシも一緒にお手伝いしますよ。なんたってコムギさんの
サンちゃんを抱いたままリーンが駆け寄り、ピタリと密着する。少し当たるシャツ越しの感触はほんのりと温かく柔らかい。
「あらあらぁ、見せつけてくれるわね♪」
「そんな冷やかさないでくださいよ」
「そう?まんざらでもない顔してるわよ?」
そりゃ美少女に積極的に好意を秘めたアプローチをされて悪い気がする男はいないだろう。しかし顔に出てたか、まだまだオレも青いな。
「なんだかんだで結構な時間になったね、あと何かやる事はあるかな?」
「おおよそ必要な話は出来ましたからアタシは大丈夫であります。カマさんからは何かありますか?」
「そうねぇ、じゃあ――」
リーンと入れ替わり、教壇に立つと顎に指を当てどうしたものかと思案している。
しばらく悩んだ後、意を決したらしいカマさんは黒板にカツカツと何やら書き始めた。
――カカカッ!
書き終わりを知らせるためか、最後の一筆部に力強い音を響かせる。
「アタシが教えるテーマは――これよぉっ!」
両手で仰々しくアピールする
『賢者のヒ・ミ・ツ♡』
「「「……」」」
「どぉ?みんな知りたいでしょぉ?知りたいわよねぇ?私のヒ・ミ・ツ♡」
「「「結構です」」」
「嘘でしょおぉぉぉ⁉」
ガーン、と不意打ちのショックを受けるカマさん。
思いがけないダメージは効いたらしく、よろよろと崩れ落ちる。そんなにショックか?
「え、私のヒ・ミ・ツよ?
世界に3人しかいない賢者、普通なら門外不出、絶対不可侵領域の超〜
「いや、凄さがイマイチわからんし」
「興味ないッピ」
「アタシはちょっと知りたい、かも……?」
「リーンちゃん空気読んでくれてありがとう。
というか貴方達、私の扱い雑すぎない⁉」
賢者と言われても何が凄いのかよくわからないんだよな。格好が派手なのが気になる位で。
「……いいわ、今日は出血大サービス!
持ってけドロボー!賢者たる私のヒミツをたっぷり教えてあ・げ・る♪」
涙をうっすら浮かべ、ヤケクソ気味に自分語りを始めようとする。賢者として威厳を多少なりとも保ちたいのか、せめて何かしたいのだろう。なりふり構わない必死なその姿はいっそ哀れだ。
「なんだかヤケになってるな……」
「見た目も中身もクドいッピね……」
「お会いするまで賢者って尊敬できる高尚なイメージだったんですけど……」
散々な言われようだ、賢者って一体……。
「さっ!切り替えて説明するわ。
心も身体もメリハリが大事よね」
(((……アンタが1番メリハリ無いよ)))
「改めて、私は『チカラの賢者』と呼ばれているんだけど理由はご存知かしら?」
「「「いや?」」」
「あら、リーンちゃんも知らないのね?」
「はい、賢者と呼ばれている方々は何か優れたチカラをお持ちで、それが賢者たらしめているとしか…」
「うんうん。その認識は間違っていないわね。
私を含め、賢者はそれぞれ、
つまり心、技、体それぞれの賢者がいて、
こんな
「コムギちゃん、今変なこと考えたでしょ?」
「考えてないし、誤解を招く言い方をしないでくれ」
「コムギさん……」「ご主人……」
――待て、なんだその目は。
やましい事は断じて一切無いが、道端の汚物を見るようなその冷ややかな視線は流石に傷つくぞ?
「冗談よ、話を戻すわね」
「頼むから真面目に頼むよ…」
「他の賢者も私と同じく自由気ままに旅をしながら修行や研鑽をしているはずよ。もしかしたら、これからどこかで会うかもしれないわね」
「マジか」
これはどう考えてもフラグってヤツだろう……。
「で、本題。
――それはね」
「「「それは?」」」
「
焼きたて魔物パンはいかがですか? 〜世界で唯一のパン職人による異世界ベーカリー奮闘記〜 オプス @opupusu
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