8話 相棒。

「キューっ!!」



 そう鳴き声を上げ、よちよちと短い足で俺の膝の上に乗る。



 な、何これ癒される……



「じゃなくて!」



 そもそも俺は武器を召喚したはずだよな? 何で白い、それも尻尾が2つある良くわからんキツネが召喚されてるんだ?



「キュー!」


「はいはい」



「だっこー」と言わんばかりに手を伸ばし、よじ登ろうとする狐を両手で持ち上げる。



「ん?」



 その時、真っ白だと思っていた狐の腹を見ると、灰色の波のような形で毛が生えていた。

 

 その形はまるでーー



「これ、刃文か……?」



 すると、俺の呟きにキツネが嬉しそうに「キュー!」と鳴く。


 とりあえず俺は『鑑定』のスキルを狐に使う。



《武器精霊 吹雪【刀】》

【効果】

 ・ステータスが微増。

 ・氷魔法の威力が増加。

 ・装備時、特殊(エクストラスキル)『精霊眼』を獲得。



「ふむ……」



 俺は次に気になった『精霊眼』に触れる。



《精霊眼》

 魔力を可視化する目。

 ダンジョン内のトラップや相手の発動する技の属性も判別可能。



 これ、大当たりじゃないのか?


 

 まず、刀の時点で俺にとって大当たり。それに加えてステータスと忍術の威力が増加し、さらには超強力な特殊(エクストラ)スキルも手に入る。


 狐を見れば、嬉しそうに「キューキュー」鳴くばかりだ。



「お前、吹雪っていうのか。俺は蓮、よろしくな」


「キュー!」



 俺の言葉に答えるように吹雪はそう鳴くと、俺の腰の辺りまで移動し、刀になった。


 その刀、吹雪は真っ白な鞘に蒼の刀身を持ち、それは美しい刀だった。



「よろしくな、相棒」



 そう呟き、ポンと軽く吹雪を叩く。


 すると、どこか嬉しそうな感情が伝わった気がして、俺は自然と笑みを零した。





***





 今日は51階層に進み、技の確認をする。

 40階層を越えたあたりから、通常モンスターの量も強さも桁違いになってきた。


 基本的に《イノチダイジニ》が俺の第一の戦闘スタイルなので、ここからは同じ階層でひたすらモンスターを倒し、レベルアップを図るのが最優先だ。



「それじゃあ、始めますかね」



 そう呟いて、吹雪を抜刀する。

 「いくぞーっ!」と息巻く感情が刀越しに伝わる。



 目の前にいるのは、骸骨騎士(スカルナイト)5匹。以前の俺なら多分一瞬で斬り殺されている相手だ。

 その相手を、実験の片手間に相手出来るのだから俺も成長したものである。



「まずは、これだよな」



 俺は精霊眼を発動し、骸骨騎士を見る。

 すると、骸骨騎士が動きを変えて魔法を放とうとする。



 すげぇ……どんな魔法をどこに撃つのかが手に取るようにわかる。



 俺は骸骨騎士の攻撃を余裕で躱しながら次のフェーズに入る。

 次は吹雪を手に入れたことで上昇した……と思われる氷の術の実験。



 俺は、敵全体を凍らせるイメージで魔法を放つ。



「凍えろ」



 詠唱によって、放たれた俺の忍術はまっすぐ骸骨騎士全てに命中し……



「ーーまじ?」



 少なくとも、俺の視界に映る場所全てを氷漬けにした。


 そして、吹雪からは「凄いでしょ!」と言いたげな感情が伝わってきた。



 これは威力含めて要練習だな。





***





 吹雪を手に入れて、3ヶ月ほどが経った。

 と言っても、時間感覚がバグっているため、今が朝なのかもわからない。


 とりあえずそれは置いておいて、俺は未だ55階層にいた。


 と言うのも、2ヶ月半ほど前に55階層のボスに挑んだのだが、そこに現れたリッチーに半殺しにされ、完全にトラウマになった。



 殺しても殺しても蘇ってきて、しかも蘇るたび強くなると言う何とも鬼畜モンスターだった。


 最終的には50回ほど倒したところで限界がきて、半自暴自棄になって最大威力で氷の術をぶちかましたらリッチーは生き絶えた。


 どうやら、リッチー本体とは別に弱点となるコアがあったらしく、俺は偶然にもそのコアを大魔法で壊したのだ。正に間一髪。2度とやりたくない。



 ーーこのままでは命がいくつあっても足りない!



 そう考えた俺はこの3ヶ月間、ひたすらレベル上げに励んでいた。



 そんなある日ーーーー。



「アレってまさか……」



 そこにあったのは、宝箱だった。


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現代ダンジョンをチート職『忍者』で無双する。 @keni_narou

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