それは大切な存在を失った二人が新たに歩き始めるまでの物語


 流れる水には地球の記憶が溶け込んでいる……その言葉が物語の主人公達を動かしたのでしょう。

 義兄と義妹……血の繋がらぬ家族である二人は、それを繋いでいた存在を失い深く傷付いていた。その二人が胸の内に抱えたどうしようもないものに区切りを付ける為、山奥にある湖を目指すのが物語の本筋です。

 しかし……その過程で少しづつ思い返される幸せだった過去が物語に深みを持たせ、そして心の深い部分に語り掛けてくる。大人の物語であるが、同時に誰もが共感できる演出であることは間違いないでしょう。

 辛い過去と向き合いつつ湖を目指す『夫の兄』と『弟の妻』という関係は、やがて大切な者を失った家族として強くなっていく流れ……まさにヒューマンドラマの名作と言えます。

 心に沁みる物語を読みたい方はお薦めです。

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