タイムリープ

 自爆を起こしたあと塵で汚れた服を叩いてクリスタはジンに精霊の使い方を教えていた。

「さっきクロエが言ってた通り、意識を集中させて唱えるだけ。さっきは精霊を集め過ぎてたから、初級魔法はジンくんの才能ならすぐで集まるから……」

 さっきの爆発で気を落としていたジンであったが、美少女に言うからには頑張らない訳には行かない。


「精霊を集め……」

 一瞬目の前が暗くなり、再び明るくなるとジンは目を疑った。場所が変わっているのだ。

「おぉこれが転移魔法か!?」

 ジンが初めて魔法を使えた喜びはすぐに消える。

「何を言ってるんだ?アンタ」

「何って転移の魔法が使えたから喜んでるんだよ!」

「ほんとに何を言ってるんだ?アンタはさっきからここで話していただろ」

 相手の顔は分かる。なぜなら今日ここに転移したミランダープの屋敷に行くよう仕向けた検問員だからだ。だが言ってることはジンには理解できなかった。

「何を言って―」強く自分の意見を言おうと下が目に入ったものを見て脳が発声をキャンセルする。

「時計の針が……戻っている!?」

 ―なにが起きたんだ?俺はたしかクリスタとクロエと魔法の練習をしてたはずだ。なのに時間が巻き戻っている……。

 いきなりの事態に脳が処理と情報量が追いつかず頭がよく回らない。

「ほら早く手をかざせよ」

 少し前にもやったやり取りが再び行われた。

「あ、あぁ……」

 手をかざすと先程と同じように検問員は慌てふためき、ミランダープの屋敷に向かうようし向かれる。


 さっきもミランダープの屋敷に行く時に乗った竜車に再び腰をかけミランダープの屋敷に向かった。

 同じ場所でおり、同じように扉を開ける。

 1度来たときでは気づかなかった庭の至る所を見ているとこれも同じように、メイドのリエルとミエルが出てきた。


「「領主ミランダープ様がお待ちです。こちらに」」

 と少し前にも聞いたハモリ技を再び聞く。

 そして、ひとつの疑問を聞く。

「なぁリエルとミエル、俺に会うのは何度目だ?」

「お客様とお会いするのは初めてです」と礼儀正しくリエルがいい、

「なぜ私たちの名前を知っているのかは聞かないであげるわ」と変わらないミエル。

「そうかならいい。それじゃ案内してくれ」

「かしこまりました。後ろを付いてきてください」


「失礼します」そういいリエルとミエルは扉を開け、「お客様をお連れしました」そういいお辞儀をし左右にはける。

 絵面は変わらず、亀甲縛りの変態ミランダープ、ムチを持った幼女クロエ、紅茶を上品に飲むイケメンクリュサオル、地獄絵図は変わらなかった。


「おや、初めましてジンくん。この光景に何もツッコまないなんて、大したことじゃーないか」

「2度目になると流石に身構えてたからな」

「何が2度目なのかは聞かないけーど、ここに来た理由は分かってるのかな?」

「神精霊って奴が着いてるんだろ?俺には」

 ミランダープはニヤリと笑い、

「ビンゴだよジンくん。よくわかってるジャーないか」

「クロエ様に精霊の使い方を教わるといいよ」とクリュサオルがいい、

「それなーらクリスタ様もご一緒にやられてはいかがでーすか?」

「うーんそうねそうするわ」


 何事も変わらず2度目の精霊の練習が始まった。

「精霊の使い方は分かるかしら?」

 ジンは頷き、

「あぁ、わかるぞ!集中して魔法を唱えるんだろ?」

「ええ、その通りかしら」

 ここで前回とは違う展開になったことをジンは感じる。

 ―前回の俺は何も知らなく爆発を起こした。だが今回は多少だが展開が読める。実際こうして展開が変わったのだから·····ならこのまま進めていくだけだ。


 クロエは少し考え、

「ならまずは攻撃魔法を覚えて見るかしら」

 そう言った。

「攻撃魔法って何があるんだ?」

「簡単な攻撃魔法は『エピセスィ』かしら人の持つ精霊を吸収することができるかしら」

 そう言いながらクロエはあるき、ジンの心臓近くを触り言った。

『エピセスィ』

 その瞬間心臓付近が熱く暴走し苦しくなり、そして痛い。

 クロエが「こんな感じかしら」そう言って手を離し、吸収した精霊を見て何か驚いた顔をしたあと顔の血の気が引いていき真っ青になったが首を振り、すぐに元の顔色に戻る。

「クリスタにやってみるかしら。彼女なら精霊が尽きることは無いから」

「ど、どんとこい」

「どんと来いって常備聞かねーな·····まぁとりあえずいくぞ」

 ジンはそう言い腕を伸ばす。だがそこで男子としての葛藤が生まれる。

 ―さっきクロエは俺の心臓付近俗に言う胸を触ったのだ。別に触られたからどうとか言わないしむしろ嬉しいまである。だが問題は次のことだ。同じようにクリスタの胸を触っても良いのだろうか……叫ばれて嫌われるのだけはなんとしても避けなければならない。

 ジンの葛藤は続く。

 ―俺は恥ずかしいが童貞だ。初めて胸を触って叫ばれたりしたら最悪の出来事だ。叫ばれでもしたら一生のトラウマになることは間違いないだろう……よしっ!

 ジンは決意を固め手を伸ばし触れた。


「意気地のない俺が情けない……」ジンの葛藤から終わった自分の出した結果に早くも後悔した。

「どうしたの?何がそんなに意気地ないの?」

「いや、なんでもない。うん、なんでもないよ」

「そうなの?それならいいけど」

 クリスタは不思議な顔をしながら納得した。


「それより上手くできてるか?」

 さっきの後悔を完全に忘れた表情でジンは聞く。

「うん!結構いい感じだね。この感覚が解ればほかの魔法も使えたも同然ね」

 こちらもさっきの不思議な顔は消えて、優しくテストで満点を取った子供を褒めるかの様に微笑んだ。


 それからジンは前回のタイムリープ時刻になってもタイムリープすることは無く時間は過ぎていった。

 ジンはクリスタに風の精霊を使った魔法を教わり、時間が溯る前にクロエが使った「アネモス」を使えるまでには精霊をコントロールできるようになった。


「凄いじゃないジン!初日で精霊を使えるようになるなんて!」

「いやいやこれもあれも全てクリスタのお陰だよ」

 喜びを分かち合っているとクロエが、

「ちょっといいかしら」と割り込んでくる。

「どうしたの?クロエ」クリスタが聞く。

「お呼び出しみたいなの。そろそろ帰るかしら」

 そう言って遠くに見える門がすぐ手前で開き開けられた。

 するとすぐ目の前に亀甲縛りをし、その上顔に仮面を付けていて変出者度がさらに上がっていた。

 するとその変出者ミランダープは、

「さぁーて出陣に行くかーな」

 手を広げまるで宴会へ行くかのごとくミランダープは言った。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る