大人のレッスン
貴賓のある廊下をクエロに手を引かれながらクリスタとジン歩いていた。
「着いたかしら」
そう言って足を止め扉をあけるとそこは部屋とは思えないほど広い空間が広がっていた。
「部屋でやるのか?」
「部屋ではないかしら。ここは私が作った特別空間かしら」
「これも精霊ってやつが関係してるのか?」
「これは精霊じゃないのよ。これは空間変化の魔法よ。そうよねクロエ」
「そうなのよ」
「いくら見渡してもなんもねーな」
「練習なんだからそんなの必要ないのよ。ほら、さっさと始めるかしら」
その合図と共にクロエとジン、クリスタの練習が始まった。主にジンの。
「コツとしては空気中に居る精霊を体内に取り込み、纏めて放出する。クロエにとってそんな難しいことではないのよ。でもあんたは違うかしら。正直その才能の片隅が見えないのよ。なぜあそこまでクリュサオルが言うのか理解に追いつかないのかしら」
躊躇いのない才能無い宣言にさすがに驚くも、ジンは揺るがない。
「そんなに才能がないのか?」
「全く持ってないと無いと思うかしら」
「··········いいぜ、やってやる。俺をこの世界に転移させた奴に目に物見せてやる後クリスタちゃんにかっこいい所見せたいしな」
その言葉に驚くようにクリスタが言った。
「私にかっこいい所見せたいの?どうしてなの?」
頭にハテナを浮かべ聞いてくる。
「どうしてって、可愛い女の子が居たらかっこよくありたいと思うのは男にとっては当然だよ。それに寂しそうな顔してたしね」
「そうなのかな?それと、寂しそうな顔なんてしてない」
「いいやしてたね。可愛い女の子の寂しそうな顔なんて誰も喜ばない。でも今俺と話すことでクリスタは感情豊かになってくれた。それと込めてかっこよくありたいと言ったんだよ」
「私は人類初の狂信者になったエルフよ!あのエルフよ!」
「それがなんだ!俺は気にしない」
「それでもなんでわたー」
「勝手に盛り上がらないで貰えるかしら。ここにいるのはあなた達2人じゃないのよ。それにここに来た目的も果たしてない。それに今その話をするべきでは無いしクリスタはそんなこと気にしてはいけない。そこを頭に入れるかしら」
割り込んできたクロエに正論を言われ沈黙する2人。
「·····クロエもお話に混ざりたかったのよね。ごめんね気づかなくて」
「お前は私の言ったことをなーんにも理解していないのかしら」
「そんな事言わないでさ、さ俺と練習するぞーちび」
「··········」
わなわなと震えるクロエに、
「オイどうしたんだ?急に震え初めて」
「わ、私がチビ·····いや分かってはいたかしら·····でもそんな面と向かって言われてみると··········この乙女心をなーんも理解していないのよ。さっきの事はこれから万死に値するかしら」
「なんだ。小さいの気にしてたのか、ならすまんすまん。でも100歳を超えといて乙女心とか言うのはきつくないかー?」
クロエの頭に血がのぼり、血管が浮き上がり、「アネモス」そう唱えるとほぼ成人の男性が軽く吹っ飛ぶほどの風がジンを直撃する。
「グハァ·····」とお腹に直撃し、悶えるような声上げ、上に飛ばされていく。だがジンは最初こそ痛かったものの空を飛ぶような感覚にだんだんなっていき、寝転びながら浮いていた。
「なぁークロエ、この風冷たく出来ないのか?暑くて」
「できるかしら」
そう言ってクロエは風を冷たー「アネモス」そのものを解除したのだ。完全に油断していて、さらに空を飛べないジンは「いやぁぁぁ」と情けない声を上げながら落ちていった。
それを近くで見ながら魔法の練習をしていたクリスタが、
「あ、危ない!」そう言って上から降ってくるジンを抱えるようにキャッチした。
もう死んだと思っていたジンは諦めていたが、突然柔らかく、「もにゅ」とした感触に襲われた。「た、助かった··········」疲れきった顔をして目を瞑りそう言ったが、事態は別の方向に傾いた。「(なんだこのいい匂いに柔らかいの··········まさかこれって!)」
期待に胸を膨らませて、目を開けるとそこには「·····なんだクッションか··········期待してそん··········」
クッションの横からルビーの様な特徴的な瞳の持ち主のクリスタがひょこっと顔を出した。
「してなかったァ!!」
「だ、だいじょうぶ?」
「大丈夫だ……でも」
でも·····のせいで何かあったんじゃないかと心配そうに聞いてくる。
「でも?」
「でも·····欲を言うなら胸でキャッチして欲しかった」
クリスタが顔を赤らめ、
「し、心配して損した!もうしーらない」
「ご、ごめんちょっとした冗談。それより本当にありがとな」
「どういたしまして!」
持ち前の笑顔に戻し言う。
「でもやっぱりクロエ!お前は許さない。危うく死ぬとこだったんだぞ」
「何を喚くのかしら。こうして無駄口を叩けるのだから問題ないかしらね」
「可愛いな、お前」
「にゃーーー!」と叫びになれない声を上げ、
「いきなり何を言うのかしらー!」
「いや、マジマジと見ながら文句を言うと、アレ、可愛くね?と思ったからつい……」
「クロエの可愛さはお母様譲りかしら。当然なのよ」
お母様の事を誇りに思っているのか誇らしげに応えた。
「こんなくだらないことで時間を潰してないでさっさと聞くのかしら」
「はい先生!」
「せ、先生!」
ジンの掛け声にクリスタが乗り言った。それを無視し、クロエは話を始めた。
「まず精霊と魔法の違いは分かるかしら」
「えーとたしか、MP言わば魔力を使うか使わないかだろ?」
「半分正解かしら。詳しくは精霊の方が色々な使い方ができ又威力も絶大」
「精霊を使った攻撃を超える魔法はないんですか?先生」
「あるにはあるかしら。でも使える人はさっきの変態ミランダープと私の知る限りあと2人と言ったところかしら。だから魔道士や騎士は精霊を好んで使うかしら」
「それじゃあ精霊はどうやって使うんですか?クロエ先生」
「うぐぬぬぬ·····」と言って話を続ける。
「それは実に簡単な事かしら。精霊は体内や空気中に散らばっていて、精霊を使う才能がある奴はそいつに精霊が集まっていくかしら」
「で、どうやって使うんですか?せんせーい」
「その先生ってのそろそろ辞めろかしら!イライラするのよ。言われなくても今から説明するかしら!意識を精霊に集中させ、使う術を唱える。分かりやすく言うとさっきの「アネモス」等が当たるかしら」
「意識を集中·····」言われた通り、意識一点に集中させる。
「おお·····なんだか集まってきてる気が」
「クリスタは下がるかしら」
何か危険を察知したような様子のクロエがクリスタにそう言った直後、
「ボン」そう音を立て身体中から精霊が飛び出る。
その瞬間クリスタは全力で逃げーきれず吹っ飛び前向きに倒れ、クロエは「ディフェーザ」を唱え防御体制に入れたので何とか飛ばされずに済んでいた。
「な、なんだ。今のは……これが精霊を使った奴なのか?」
初めて魔法を使い興奮冷めやらない様子で言うじんに対し、
「こ、こんなの魔法じゃないかしら!こんな初級魔法にどんだけの精霊を使おうとするのかしら。精霊を集めすぎて爆発するまで集めろなんて言ってないかしら」
「いやそんな事言われても……言われた通りにやったつもりだったんだけど」
それを聞いたクロエは呆れたような顔をし、「ここまでの精霊を取り込み、身の回りに従えてるのにセンスが皆無だなんて始めてかしら」
「センスが皆無って……」
「クロエが教えられるのはある程度のセンスがある人だけかしら」
そのあとすぐ少し考え、
「……そうだクリスタに教えてもらえばいいかしら。そうすればある程度分かるかしら」
その言葉にクリスタは頷き、「すごーく、厳しくするからね」と冗談交じりに微笑みながら言った。
「こんな美人に教えて貰えるのか」と感動して倒れ混んでいる。
「それじゃあ練習を始めましょうかジンくん」
そう言って2人の練習が始まった。
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